訪日外国人消費の動向-円安で消費額はコロナ禍前の95%、インバウンドもモノからコトへ

訪日外国人消費の動向-円安で消費額はコロナ禍前の95%、インバウンドもモノからコトへ
(写真はイメージです/PIXTA)

23年6月の訪日外客数はコロナ禍前の7割ほどの水準まで回復しました。円安による割安感で滞在日数が伸び、1人当たり消費額も増えているといいます。本稿ではニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が、訪日外国人の消費額やその内訳等について解説します。

1―はじめに~期待されるインバウンド消費の本格再開

5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に引き下げられて以降、旅行やレジャーなどの外出関連の消費が活発化している。観光地では訪日客の姿も目立つようになり、インバウンド消費の本格的な再開が期待される。このような中、本稿では、観光庁「訪日外国人消費動向調査」や日本政府観光局「訪日外客統計」などを用いて、足元のインバウンド消費の動向を捉える。

2―訪日外客数~コロナ禍前の7割へ回復、中国は途上、米国やシンガポールは円安でコロナ禍前超過

1|全体の状況~2022年下期から回復傾向、2023年6月はコロナ禍前の7割へ回復

訪日外客1数は2022年後半から回復傾向にあり、2023年6月(2,073,300人:推計値)ではコロナ禍前の2019年同月(2,880,041人)の72.0%まで回復している(図表1)。なお、2023年1月から6月の半年間で見ると、64.4%の回復状況である。

 

 

 


1 訪日外客とは、外国人正規入国者から日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者のこと。駐在員やその家族、留学生等の入国者・再入国者は訪日外客に含まれる。

 

2国籍・地域別の状況~中国は規制で回復途上、米国やシンガポールは円安でコロナ禍前超過

国籍・地域別に訪日外客数を見ると、2019年1-6月で最も多いのは中国(27.2%)で、次いで韓国(23.2%)、台湾(14.9%)、香港(6.6%)、米国(5.3%)までが5%以上で続く(図表2(a))。なお、東アジアが約7割を占める。

 

一方、2023年1-6月で最多は韓国(29.2%)で、次いで台湾(16.5%)、米国(9.1%)、香港(8.5%)、中国(5.6%)と続き(図表2(b))、中国が占める割合が大幅に低下していることで、その他のコロナ禍前からの上位国の占める割合が相対的に高まっている。

 

また、2019年1-6月に対する2023年1-6月の各国籍・地域の訪日外客数の伸び率を見ると、最も高いのはベトナム(18.9%)で、僅差でシンガポール(18.0%)が続き、次いで米国(11.1%)、メキシコ(10.7%)が1割以上で続く(図表2(c))。一方、圧倒的に伸び率が低いのは中国(▲86.9%)で、次いでロシア(▲71.0%)も7割を超えて高く、台湾(▲28.6%)、タイ(▲27.2%)と続く。

 

中国からの訪日再開が遅れている背景には、日本行きの海外旅行商品の販売中止措置や観光ビザの年収による発給制限といった中国政府による規制の影響があげられる。一方、コロナ禍前の訪日外客数を大幅に上回る米国やシンガポールなどについては、円安による日本旅行に対する割安感の影響、ベトナムなどについては技能実習生の新規入国再開(2022年3月~)などの影響があげられる。

 

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月9日に公開したレポートを転載したものです。

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