米ドル/円「今年最安値」を記録…円安はどこまで続くのか【国際金融アナリストが解説】

8月15日~21日の「FX投資戦略ポイント」

米ドル/円「今年最安値」を記録…円安はどこまで続くのか【国際金融アナリストが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週の米ドル/円は、ほぼ一本調子に円安が進行。8月14日には年初来安値(米ドルは高値)をつけました。円安相場は今後も続くのか、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

今週の注目点…介入再開と米景気動向

では、米ドル/円は年初来の米ドル高値を更新し、一段の上昇に向かうことになるのか。

 

これまで見てきたことを前提とするなら、主な注目点は

 

①投機円売り拡大がどこまで続くのか

②米金利上昇に伴う日米金利差拡大が米ドル高・円安をどこまで正当化できるか

 

となります。

 

①投機円売り拡大はどこまで続くか

145円と言う水準は、日本の通貨当局が2022年9月22日に米ドル売り・円買いの為替市場介入を行った水準でした。

 

ひと頃より「悪い円安」との声は少なくなった印象はありますが、鈴木財務大臣は6月末に「足元で政策課題になっているのは物価高騰対策であり、そういった政策課題からすると今の状況(円安)は良くない」と語っており、こういった発言からは行き過ぎた円安を阻止する基本姿勢に大きな変化はないと考えられます。

 

その意味では、145円を越えて為替介入への警戒感も強まることにより、投機的な円売り拡大にも自ずと限度が出てくる可能性が高いのではないでしょうか。

 

②米金利上昇に伴う日米金利差拡大が米ドル高・円安をどこまで正当化できるか

定評の高いGDP予測モデルであるアトランタ連銀のGDPナウは8日、7~9月期のGDP前期比年率の予想値を4.1%上昇へ上方修正しました。これを見ると、米景気は一時の後退懸念からむしろ「過熱懸念」へ一変してきた可能性すらあります。

 

一方で、インフレ対策の利上げについては、先週の米7月CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)といったインフレ指標の結果を受けて、次回9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ予想は高まるところとはなりませんでした。

 

こういったなかで、米金利も金融政策の影響を受ける短中期金利に連れて、たとえば米10年債利回りは2022年10月に記録したこの間の高値更新含みの動きとなるなど、長期金利の上昇が目立つようになっています(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米10年債利回りの推移(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

このため、為替市場も米10年債利回りに反応しやすくなっているようです。

 

この米10年債利回り、2022年10月にピークアウトした当時は、90日MA(移動平均線)かい離率が30%程度まで拡大、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていました。

 

一方、足元の90日MAかい離率は10%程度にとどまっており、まだ短期的な「上がり過ぎ」懸念が強いというほどではなさそうです(図表6参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米10年債利回りの90日 MAかい離率(2010年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

ただし、米10年債利回りの5年MAかい離率は最近でも80%程度となっており、中長期的には記録的な「上がり過ぎ」といった状況が続いている可能性があるため、米10年債利回り上昇はいつ終わってもおかしくありません(図表7参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表7]米10年債利回りの5年MAかい離率(2010年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

以上を踏まえると、米10年債利回りなどは、米景気動向をにらみながら短期的な「上がり過ぎ」をどこまで拡大するかが当面の焦点と考えられます。

 

米ドル/円はそんな米金利の動きを注目しながら、145円を大きく超えるようなら円安阻止介入再開も警戒しつつ値動きが荒れる可能性があります。

 

以上のことから、今週の米ドル/円予想レンジは、142~147円中心で想定しています。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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