(写真はイメージです/PIXTA)

新築マンション価格は10年間で2.3倍になった東京23区は、首都圏のマンション価格上昇の中心地となっています。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、需要と供給の両面から、新築マンション市場の動向について解説します。

2. 新築マンションの価格は戸当たり価格の見かけ以上に上昇している

また、一般的なマンション広告では、価格総額は大きく表記されるが、単価についてはあまり言及されないため、最近マンション購入を検討し始めた人の中には面積の縮小傾向に気づいていない人がいるかもしれない。

 

首都圏新築マンションの面積は、東京23区が横ばい、その他のエリアが縮小傾向である。

 

長谷工総合研究所によると、2022年の平均面積は、東京23区が63.96m2(前年比▲1.1%)、東京都下が65.77m2(▲3.7%)、神奈川県が66.34m2(▲1.8%)、埼玉県が67.77m2(▲0.3%)、千葉県が69.52m2(▲0.7%)となった。

 

60m2を下回る間取りでは売行きが悪くなるため、価格水準の高い東京であっても一定の規模は確保されている(図表4)。

 

首都圏新築マンションの単価は、東京23区の上昇が著しく、埼玉と千葉でも上昇傾向である。

 

2022年の分譲単価は、東京23区が1,288千円/m2(前年比+0.5%)、東京都下が796千円/m2(前年比+7.4%)、神奈川県が816千円/m2(前年比+4.6%)、埼玉県が777千円/m2(前年比+9.9%)、千葉県が662千円/m2(前年比+7.5%)となった(図表5)。

 

面積と単価の戸当たり価格への影響をみると、東京23区はm2単価の上昇が価格上昇の原因となっている。面積は大きく変わっておらず、戸当たり価格の価格上昇も見かけの通りである。

 

これに対し、東京都下と神奈川は面積が縮小する一方で、単価については一進一退で、面積の縮小が原因で価格が上昇している。

 

また埼玉と千葉は面積の縮小とm2単価の上昇の相乗効果で価格が上昇している。つまり、面積縮小が進むエリアでは新築マンションの戸当たり価格上昇の見かけ以上に価格が上昇している。

 

3. 住宅価格がさらに上がると思う人が買っている

このように価格上昇が続く背景の一つには、投資需要の高まりがあるようだ。

 

リクルートが2022年12月に行った調査によると、2022年に住宅の購入を検討した人のうち「住宅の買い時だ」と思っていた人が全体の44%おり、2019年の54%より▲10%と減少している。

 

しかし、この人たちに買い時だと思った理由を尋ねると、「これからは、住宅価格が上昇しそう」と答えた人が47%おり、2019年の26%よりも増えていた。

 

一方で「住宅ローン金利が安い」と考える人は2019年の41%から35%に、「住宅価格がお手頃」と考える人は29%から25%に、「ローン減税が有利」と考える人は18%から14%に減っている(図表6)。

 

一見矛盾しているように見えるが、新築マンション価格が高まり続けていることを合わせて考えると、答えが見えてくるのではないだろうか。

 

つまり、標準的な価格帯のマンションについては割高に感じる人が増えて売れ行きが鈍る一方で、市場全体の一部である立地も設備もよい高価格帯のマンションについては資金的に余裕のある人が「さらに価格が高くなる」と考えて積極的に購入し、市場全体では平均価格が引き上げられていると考える。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年7月28日に公開したレポートを転載したものです。

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