(写真はイメージです/PIXTA)

7月25-26日に開催された連邦公開市場委員会(FOFM)では、FRBは0.25%の利上げを行い、政策金利を5.25-5.5%に引き上げました。パウエル議長は、6月のCPIが予想を上回る低下を示したことを歓迎しつつもデータを過大評価しないことを強調し、FRBは引き続き物価安定を優先する姿勢を明確にしました。本稿ではニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、今回のFOMCの概要を解説します。

3.声明の概要

(金融政策の方針)

  • 委員会はFF金利の目標レンジを5.0-5.25%に維持することを決定(今回削除)
  • 委員会はFF金利の目標レンジを5.25-5.5%に引上げることを決定(今回追加)
  • 加えて、以前発表した計画通り、財務省証券、エージェンシー債、エージェンシーの住宅ローン担保証券の保有を引き続き削減する(変更なし)

 

(フォワードガイダンス)

  • 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
  • 今回の会合で目標レンジを据え置くことは、委員会が追加情報とそれが金融政策に及ぼす影響を評価することができる(今回削除)
  • 委員会は追加情報とそれが金融政策におよぼす影響を引き続き評価する(今回追加)
  • インフレ率を時間の経過とともに2%に戻すのに適切な追加の金融引締めの程度を見極める上で、委員会は金融政策の累積的な引締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する予定である(変更なし)
  • 委員会はインフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしている(変更なし)
  • 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
  • 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
  • 委員会の評価は労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する(変更なし)

 

(景気判断)

  • 最近の指標は経済活動が穏やかなペースで拡大してきていることを示唆する(経済活動について、前回の「緩やかなペースで拡大を続けている」”has continued to expand at a modest pace”から「穏やかなペースで拡大してきている」”has been expanding at moderate pace”に軽微に表現変更され、判断が上方修正)
  • ここ数ヵ月の雇用の伸びは力強く、失業率は低いままだ(変更なし)
  • インフレは高止まりしている(変更なし)

 

(景気見通し)

  • 米国の金融システムは健全で強靭だ(変更なし)
  • 家計や企業の信用状況の引締まりは、経済活動、雇用、インフレを圧迫する可能性が高い(変更なし)
  • これらの影響の程度は依然として不透明である(変更なし)
  • 委員会はインフレリスクに引き続き高い注意を払っている(変更なし)

 

4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
 

  • パウエル議長の冒頭発言
    • 本日、政策金利を0.25%引上げるという新たな一歩を踏み出し、保有有価証券の削減を急ピッチで進めている。我々は多くの領域をカバーしてきたが、引締めの効果が完全に表れるのはまだ先のことだ。
    • 最近の指標は、経済活動が穏やかなペースで拡大していることを示している。個人消費の伸びは年初から鈍化しているようだ。住宅部門は住宅ローン金利の上昇を主因として1年前の水準を大きく下回っている。金利の上昇と生産高の伸び鈍化も企業の固定投資の重荷になっているようだ。
    • 労働市場は依然として非常に逼迫している。労働市場の需給バランスが改善する兆しが続いている。雇用と雇用者数の格差は縮小しているものの、労働需要は依然として供給力を大幅に上回っている。
    • インフレ率は長期目標である2%を大幅に上回っている。PCE価格指数は総合指数が前年同月比3.8%、コア指数が同4.8%上昇した。インフレ率は昨年半ばから幾分緩やかになっているとはいえ、インフレ率を2%に戻すにはまだ長い道のりがある。
    • 委員会は今後も入手するデータの総合性と、それらが経済活動とインフレの見通しに与える影響、およびリスクのバランスに基づいて会合毎に決定を下す。インフレ率の低下には、トレンド以下の成長と労働市場の軟化が必要である。

 

  • 主な質疑応答
    • (今後の利上げペースについて、9月と11月で利上げする可能性があるか、1会合置きに利上げするのか)1会合置きに引上げる決定をしていない。我々は会合毎に決定していく。6月のCPIデータは予想より幾分良かったが、1ヵ月分のデータでしかない。今から9月会合までに2回の雇用統計、2回のCPIが発表される。我々はすべてのデータを考慮して9月会合で金融政策を決定する。一方、金融政策は引締め的であり、経済活動とインフレに下方修正圧力をかけている。
    • (成長が今後順調に進んでいくとしたら、それはインフレ高進の可能性を示すのか、ソフトランディングの可能性を示すのか)経済の全体的な回復力、労働市場に悪影響を与えずにインフレの低下を達成できたことは良いことだ。しかし、成長率の上昇はインフレ率の上昇につながる可能性があり、金融政策による適切な対応が必要になる。
    • (もし、インフレ率が3%に留まった場合、あるいはもう少し下がった場合、物価目標を達成するためにどの程度の失業率の増加を許容するのか)歴史的には中央銀行がインフレを抑えるために景気を減速させると、その結果、労働市場の状況が軟化する傾向がある。我々はそれができるだけ少ないことを望んでいる。インフレをコントロールすることの短期的な社会的コストがどうであれ、それを怠ることの長期的な社会的コストの方が大きい。
    • (9月に利上げがあるとすれば、6月会合で政策金利据え置きの根拠として語ったより緩やかな引締めペースの必要性との整合性はどうなるのか)より緩やかなペースといっても、直ぐに1会合置きのペースになる訳ではない。3会合のうち2回利上げになる可能性もある。つまり、ペースを落とすということは、目的地に近づくにつれて決断のサイクルを遅くするということだ。
    • (FOMC参加者の見通しについて、PCE価格指数の総合指数とコアが3%前後に予想される中で利下げが示唆されている。インフレが2%に近づくと利下げを開始するのか低下スピードも重要なのか)両方を考慮に入れるべきだ。利下げを行うかどうかは、全体的な、あるいは様々な事柄に左右されるだろう。利下げをするのは今年ではないだろう。多くのFOMC参加者が来年の利下げを予想している。それは、今から丸1年後のその時に判断しなければならないことであり、インフレ率が目標の2%まで下がってきていることをどれだけ確信できるかということになるだろう。
    • (FRBスタッフは景気後退の可能性について見方を変えたのか)スタッフは現在、今年後半に成長の顕著な鈍化が始まるとの見通しを立てているが、最近の経済の回復力を考慮すると、もはや景気後退は予測していない。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年7月27日に公開したレポートを転載したものです。

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