(※写真はイメージです/PIXTA)

土地を相続する際に利用すれば、相続税の課税評価額が大幅に減額される可能性のある「小規模宅地等の特例」。加えて、通称「家なき子特例」と呼ばれるものがあるのをご存知でしょうか? 本連載は、後藤光氏が代表を務める株式会社サステナブルスタイルが運営する、相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』の記事から、一部編集してお届け。今回は、土地を相続する際に知っておくべき「家なき子特例」について、利用するための要件や必要書類、注意点などを詳しく解説します。

小規模宅地等の特例や「家なき子特例」とは?

小規模宅地等の特例とは、故人が住んでいた土地、事業・賃貸用の土地を相続する場合、一定の要件を満たせば相続税の課税評価額が大幅に減額される制度のことです。

 

この減税措置は基本的に故人の配偶者が無条件で、子供などの親族は同居を条件として利用できます。しかし、親族は同居をしなくても、小規模宅地等の特例を利用できるケースがあります。

 

例外的に同居をしなくても本制度が利用できる措置は、通称「家なき子特例」と呼ばれています。

家なき子特例を利用するための要件は? 

家なき子特例を利用できれば、親族は小規模宅地等の特例と同じく、相続税の課税評価額の80%を減額できます。しかし、事業・賃貸用の土地には家なき子特例が利用できず、居住用の宅地のみが対象です。

 

2018年の改正前は次の3要件を満たす必要がありました。

 

1.故人に配偶者や同居の親族はいない

 

2.宅地を相続した親族が、その3年前までに自己または自己の配偶者の持家に住んだ経験がない

 

3.相続した宅地は相続税の申告期限(被相続人が死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内)まで保有している

平成30年の改正で家なき子特例のルールが変わった? 

家なき子特例は節税対策として、宅地を引き継いだ相続人から利用されるケースが非常に目立ち始めました。これに対応し、2018年の改正で要件の厳格化が図られています。

 

家なき子特例の要件厳格化の背景

同居の要件が不要で、大幅な節税が期待できる家なき子特例は、相続税の負担を軽減したい相続人に節税対策として注目されています。

 

例えば、宅地を引き継いだ相続人は自分で購入した持家に住み続け、その名義を自分の子供(故人からみて孫)へ変更し、意図的に持家がない状態にして相続税を軽減するというやり方です。

 

また、第三者に持家を売却するものの、自分は売却したはずの家に住み続け、実際に所有者となった第三者へ賃料を支払い賃貸物件として利用している状態とする等、節税のため持ち家がない状態を作為的に作る方法も見受けられました。

要件の厳格化の内容

税負担の公平性が失われる事態を招くと考えた政府は、次のように家なき子特例の要件厳格化を図りました。

 

(1)改正前の要件No.2の厳格化

「宅地を相続した親族が、その3年前までに自己または自己の配偶者の持家」に住んだ経験がないという要件へ、更に「相続人の3親等以内の親族の持家」「相続人と特別の関係がある法人の持家」が追加されました。

 

この厳格化により、親名義の住居はもちろん自分の子供の名義等に変更しても、家なき子特例の対象外となってしまいます。

 

(2)要件No.4の追加

新たに「相続開始時の居住家屋を一度も所有したことがない」という要件が追加されています。この要件があるので、売却したはずの家に賃料を払って住み続け、作為的に持ち家がない状態をつくるという方法は認められません。

次ページ家なき子特例の利用の可否を具体例をもとに解説

※本記事は、株式会社サステナブルスタイルが運営する相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』より転載したものです。

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