(※写真はイメージです/PIXTA)

「親父のことは嫌いだから、遺産なんていらない」…このような特定の相続人がいた場合、「被相続人の生前に相続放棄の約束を取り付けておこう」と考えるケースはしばしば見られます。ですが、実際にはそう簡単に相続放棄をさせることはできないようです。具体的な事例から、トラブルになりやすい原因と対策を見ていきます。日暮里中央法律会計事務所・三上貴規弁護士が、被相続人の生前におけるあらかじめの相続放棄について、詳しく解説します。

兄の弁護士から、思いもよらない連絡が

友子さん(仮名)は兄と二人兄弟であり、母は数年前に他界しましたが、父は存命です。友子さんと父の関係は良好ですが、兄と父は長年不仲が続いています。

 

兄はことあるごとに「親父のことは嫌いだから、亡くなったとしても遺産なんていらない」と言っていました。父も兄には遺産を渡したくないと考えていましたが、「遺言書を作るのは面倒だ」と言って、遺言書を作成することはありませんでした。

 

友子さんは、父が亡くなった後に兄が前言を撤回し、遺産を要求してくるかもしれないと心配になりました。そこで、友子さんは、兄に相続放棄の念書を書いてもらうことにしました。

 

友子さんが兄に連絡したところ、兄は念書を書くことを了承し、「相続放棄します」という内容の念書に署名・捺印をしてもらうことができました。「これで父の遺産が兄に渡ることはない」と友子さんは一安心しました。

 

その数年後、父は他界しました。

 

友子さんが父の遺産を調査したところ、父に借金はなく、A銀行に4,000万円の預金があることが判明しました。友子さんは、兄が念書によって相続放棄しているため、相続人は自分一人であり、4,000万円は全て自分が取得できると考えました。

 

父の葬儀等を終えた友子さんは、預金の払戻しに必要な戸籍謄本や自身の印鑑登録証明書を準備し、念書と一緒にA銀行に提出しました。「これで預金の相続手続は完了した」友子さんはそう肩をなでおろしました。

 

しかし、A銀行の担当者から思いもよらないことを言われます。「お客様が預金を払い戻すには、相続人であるお兄様の同意が必要です」友子さんは耳を疑いました。

 

「兄は念書で相続放棄をしているので相続人ではないはずです」友子さんがそう言っても、A銀行の担当者は取り合ってくれませんでした。

 

数日後、友子さんのもとに兄の代理人を名乗る弁護士から「遺産分割協議申入書」という書面が届きました。その内容は、相続人である友子と兄で遺産分割協議をしたいというものでした。

 

不安になった友子さんは、弁護士に相談することにしました。

 

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