(※写真はイメージです/PIXTA)

相続人の中に外国居住者がいる場合の遺産分割はどうなるのでしょうか。また、外国居住者の場合、連絡が取れないということもありえるため、相続手続きは煩雑になる可能性が高いです。そこで本記事では、実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、相続人のなかに連絡を取れない人、外国居住者がいる場合の遺産分割方法について解説します。

相続人が「海外にいる」場合の相続

【相談の概要】
A(75歳)が死亡し、相続人はAの妻B、Aの子C及びDです。Aは日本国籍で日本に住んでいたものの、Dは外国で結婚して現地に住んでいます。

 

Aの遺産について話し合いがまとまって遺産分割協議書を作成したいのですが、何が必要でしょうか。調停を申し立てる場合には何が必要でしょうか。Dが日本とX国との国籍をもっていたところ、X籍を選択した場合、相続人になりますか、遺産分割はどのようにしますか。Dと30年ほど連絡がとれない場合、どのように進めたらよいでしょうか。


【相談を受けた弁護士の回答】
被相続人が日本国籍であれば相続の準拠法は日本法となり、国内事案と同じように手続きを進めることになります。

 

外国に相続人がいる場合、金融機関等で必要になる書類取得に時間がかかったり、印鑑登録証明書に代わる書類を探す必要があったりするため、時間に余裕をもって手続きを進める必要があります。相続人が行方不明の場合には、ある程度の調査を行ったうえで、不在者財産管理人の選任申立てを行うことが考えられます。

1.相続に関する準拠法

通則法36条において、相続は被相続人の本国法によるとされています。本件において、Aは日本国籍を有していますので、相続人が海外に居住しているか否かにかかわらず、相続には日本法、すなわち民法が適用されます。

2.遺産分割協議に必要な書類

Aの相続については日本法が適用されますので、遺産分割協議についても日本法に基づいて行われます。

 

遺産分割協議書を作成するにあたっては、一般的に実印を捺印し、印鑑登録証明書をつけます。また、預貯金の相続手続を行うにあたっても金融機関から印鑑登録証明書を要求されることが多くあります。日本に住民票が無く外国に居住している場合、日本国内において印鑑登録を行うことができないことから、印鑑登録証明に代わるものとして領事館で発行する署名証明があります。

 

また、領事館所在地から遠方に居住しており署名証明をもらうのが難しい場合には、印鑑登録証明に代わるものを取得する場合もあります。例えば、アメリカではnotary public(公証人)に文書の認証をしてもらうことにより署名証明に代えるということも考えられます。中国においては、公証処を利用することも考えられます。

 

外国での書類の取得には時間がかかることもありますので、不動産登記や金融機関での手続きにおいて必要な書類を事前に確認することが好ましいでしょう。

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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