〈資産総額1億円〉亡父の遺言書を見た二男「取り分が少ない」…侵害された“遺留分”を取り戻す方法を弁護士が解説

〈資産総額1億円〉亡父の遺言書を見た二男「取り分が少ない」…侵害された“遺留分”を取り戻す方法を弁護士が解説
(※写真はイメージです/PIXTA)

一定の相続人には、遺産の一定割合の取得を最低限保障した「遺留分」が法律で定められています。しかし、この遺留分は、被相続人の遺言や生前贈与によって侵害されてしまうことがあります。それでは、遺留分が侵害された場合、自分の取り分を取り戻すにはどうすればよいのでしょうか? 実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、遺留分侵害額の請求方法について解説します。

遺留分を侵害する内容の遺言書が遺されていた場合

【相談の概要】

被相続人Aには、妻B、長男C、二男Dがいます。Aの遺産は、不動産5,000万円、株式等の有価証券2,000万円、預金3,000万円であり、債務300万円があります。Aは、公正証書遺言を作成しており、その内容は次のとおりです。

 

・Bに不動産を相続させる。

・Cに有価証券及び1,000万円を相続させる。

・Dに1,000万円を相続させる。

・Eに1,000万円を遺贈する。

 

また、Aは、生前、次の内容の贈与をしていました。

 

・妻Bに200万円(15年前)

・長男Cに300万円(15年前)

・二男Dに300万円(5年前)

 

Dは、自身の遺留分が侵害されているのではないかと考えています。

 

【相談を受けた弁護士の回答】

遺留分侵害の有無を確認するために遺留分の算定等を行いつつ、遺留分侵害額請求の消滅時効等の期間制限に留意しながら、権利行使を行う必要があります。

1.「遺留分」とは?

遺留分は、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の取得を一定の法定相続人に保障するために、被相続人の意思にかかわらず、被相続人の財産から最低限の取り分を確保する制度です(民法1042条以下)。相続人が保障されたはずの遺留分に満たない財産しか得ることができない場合、被相続人から遺産を受け取った受遺者又は受贈者に対し、侵害された遺留分に相当する金銭の請求(遺留分侵害額請求)をすることができます(民法1044条)。

 

遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人です(民法1042条)。胎児も相続人なので(民法886条1項)、遺留分もありますが、権利行使は出生時となっています(同条2項)。

2.遺留分侵害額の計算

(1)遺留分侵害額計算の進め方

遺留分侵害額の計算は、次のとおり行います(民法1046条2項)。

 

遺留分を算定するための財産価額の算定(民法1043条、1044条、1045条)

 

遺留分を算定するための財産の価額
=(相続開始時における被相続人の積極財産の金額)
+(生前贈与の額)
(相続人に対する生前贈与の場合原則10年以内)
(第三者に対する生前贈与の場合原則1年以内)
−(被相続人の債務額)

 

②遺留分率の算定(民法1042条)

 

​③①財産額と②遺留分率から遺留分を算定(民法1042条、1043条)

 

④③の遺留分から、

 

(i) 当該遺留分権利者の特別受益を控除(民法1046条2項1号)

※民法1046条2項1号は、遺贈又は民法903条1項に規定する贈与の価額を控除すると規定しており、民法1044条とは異なって、1年又は10年の限定がありません。

 

(ii) 遺産分割未了財産から当該遺留分権利者が取得すべき財産を控除(民法1046条2項2号)

 

(iii)当該遺留分権利者が承継する債務を加算する(民法1046条2項3号)

 

遺留分侵害額
=(遺留分)……③
−(遺留分権利者が得た遺贈又は特別受益の額)……④(i)
−(遺留分権利者が遺産分割において取得すべき財産の価額)……④(ii)
+(遺留分権利者が相続によって負担する債務の額)……④(iii)

 

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次ページ二男Dが遺留分侵害の有無を算定する方法

※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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