税務署職員「税務調査に伺います」…49歳・運送業社長、思わぬ「多額の追徴課税」に膝から崩れ落ち、涙【税理士が解説】

税務署職員「税務調査に伺います」…49歳・運送業社長、思わぬ「多額の追徴課税」に膝から崩れ落ち、涙【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「経費削減」をしようとし、税務調査で「多額の追徴課税」を課されるケースは多くあると、税理士の都鍾洵(みやこ しょうじゅん)氏はいいます。今回は、運送業者が税務署から追徴課税を受ける仕組みについて、M&Aに詳しい都税理士が事例をもとに解説します。

49歳若社長が直面した大きな障壁…解決は「まず不可能」

Amazonや楽天市場に牽引され、EC市場は右肩上がりの成長を見せています。これに伴い、物流業界も活況です。佐川、ヤマトは売上を伸ばし、更なる値上げを強行するなど勢いは止まるところを知りません。

 

下請けの中小運送会社にも自然と仕事が増えていますが、同業他社との競争は激しく、受注単価は抑えられます。そこに、近年の原油高の高騰、高速代の値上げ、ドライバー不足が三重苦で圧し掛かっています。

 

父親が創業した高山運送(仮称)を引き継いだ高山浩一(仮称・49歳)若社長も悩んでいました。

 

「運送業には航空業のような燃油サーチャージ制度も無く、原油高を価格転嫁できない。大手元請は見て見ぬふりをして、値上げには応じない。しかし事業継続のために、利益は確保しなければならない。何とか経費削減をしなければ…。」

 

しかし、運送業の経費の大半は、「軽油、高速代、人件費、家賃、修繕費、タイヤ代」で構成されています。これらは直接原価と言い、売上に連動して一定割合で発生する経費ですので、削減することはまず不可能です。

 

例えば軽油は走行距離によって増減しますが、売上も基本的には走行距離で増減します。高速代は削減しようとすると高速を使わずに下道を走ることになります。この場合には高速代は発生しませんが、時間が掛かることによるドライバーの残業代の発生や事故のリスク増加といった別の経費が生じます。修繕費を削減しようとすると、自動車整備を行うためにある程度の設備を自社内で保有するべく、一度の大きな投資が必要となり、トラックの台数と比例して家賃も一定の割合で掛かってしまいます。

コンサルの一言が転機に。しかし、それこそが「落とし穴」だった──

「これ以上削減できる経費が無い…どうすれば良いだろう…」

 

ネットで「経費削減 運送業」「運送屋 節税」などで必死にキーワード検索すると、『売上の5%を経費削減するメソッド』というコンサルタント会社のホームページを見つけました。

 

セミナーを受け、藁をも掴む気持ちでコンサルタントの指導を受けることにしました。

 

過去に税理士事務所に勤務していたというコンサルから提案を受けたのが、「消費税の節税」です。

 

高山運送の売上は約8億円のため、預かり金である消費税は年間8,000万円になります。仮払消費税を控除しても、税務署へ毎年収める消費税は年間4,000万円にのぼります。

 

「ドライバー給与を外注扱いとしてください。同じ1,000万円を支払っても、外注費なら100万円の消費税が控除できます。契約を巻き直せば問題にはなりません。」

 

なるほど! 高山若社長は素早く動きました。

 

ドライバーには「これまでと同様の働き方ですからね。安心してくださいね。契約が外注扱いになっても、所得税は引きませんので、手取りは増えますよ。社会保険? 一部は給与扱いとしましょう。それなら社会保険負担も減ります。その代わり、外注部分については確定申告してくださいね?」

 

この方法で、大半のドライバーに承諾をもらい、給与を外注費とすることに成功しました。

 

年間給与は全部で2億5千万円にもなります。このうち2億円相当を外注扱いとできたため、その10%相当額にあたる2,000万円の節税ができたのです。

 

「良かった。これで何とか事業継続できるぞ…!」

 

浮いたお金は資金繰りに回したり、気分転換に夜の街を梯子(はしご)したりして使用しました。

次ページ追徴課税8,700万円。行き詰まり辿り着いた先は……

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