前回は、事業併用の二世帯住宅で「小規模宅地等の特例」が適用される事例を解説しました。今回は、「親が老人ホームに入った場合」にも適用される、小規模宅地等の特例について見ていきます。

小規模宅地等の特例が適用される規定とは?

二世帯住宅で親子の同居生活を始めた後、子世帯だけになる場合としては、親が老人ホームに入居し、そのまま家に戻らないケースも考えられます。以前にも触れたように、改正により親が終身利用権付きの老人ホームに入ったような場合でも、小規模宅地等の特例が適用されることになりました。

 

ただし、厳密にいえば、終身利用権付きの老人ホームに入居しても特例が必ず適用されるというわけではありません。改正によって新たに定められた要件を満たすことが必要となります。

 

詳しく説明すると、改正前は、親が老人ホームに入った場合、小規模宅地等の特例が適用されるためには、以下の4つの規定を満たすことが求められていました。

 

イ 被相続人の身体または精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入居することとなったものと認められること
ロ 被相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと
ハ 入居後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと
ニ その老人ホームは、被相続人が入居するために被相続人またはその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと

「廃止された規定」と「新たに定められた要件」

従来は、上記のニの規定のために、老人ホームに入居した場合に、特例が適用されないおそれがあったわけです。しかし、改正により、ロ及びニの規定は廃止されました。その結果、終身利用権を取得し有料老人ホームに入居していたような場合でも、特例の適用を受けることが可能となったのです。

 

一方、イとハの規定は若干の修正がなされたものの基本的に残存しています。まず、イについては、以下のような形に整理されました。

 

介護保険法に規定する要介護認定または要支援認定を受けていた被相続人が次に掲げ
る住居または施設に入居または入所していたこと

ⅰ 老人福祉法に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(認知症高齢者グループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム
ⅱ介護保険法に規定する介護老人保健施設
ⅲ 高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定するサービス付き高齢者向け住宅(ⅰの有料老人ホームを除きます)

 

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が同法に規定する障害者支援施設(施設入所支援が行われるものに限ります)または共同生活援助を行う住居に入所または入居していたこと

 

なお、上記の要介護認定もしくは要支援認定または障害支援区分の認定を受けていたかど
うかは相続開始時点で判定することとされているため、入居または入所前にこれらの認定を受けている必要はありません。

本連載は、2015年7月30日刊行の書籍『親子で進める二世帯住宅節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

親子で進める二世帯住宅節税

親子で進める二世帯住宅節税

斎藤 英一

幻冬舎メディアコンサルティング

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