(※画像はイメージです/PIXTA)

政府は、0歳~2歳児がいる家庭を対象に、「出産準備金」として、ベビー用品や育児サービスに使えるクーポンを10万円分を配布する方針を固めました。1回きりでなく継続的な制度にすることも検討されているとのことです。しかし、「バラマキ」ではないかとの批判がなされています。また、実効性についても疑問が投げかけられています。何が問題なのか、現行の妊娠・出産をサポートする公的制度等も含め、解説します。

「出産準備金」はただのバラマキ?

以上の通り、わが国には、既存の制度として「出産育児一時金」「出産手当金」「育児休業給付金」があります。

 

それにプラスして「出産準備金」として10万円のクーポンの制度を設けることには、どのような意味があるでしょうか。

 

実は、すでに似たような制度として、東京都がコロナ禍での出産をサポートするため10万円相当の「ポイント」を給付する「東京都出産応援事業(赤ちゃんファースト)」を実施しており、今回の「出産準備金」はこれにヒントを得たものである可能性があります。

 

しかし、東京都はあくまで地方公共団体であり、地域の課題に向き合うのが仕事です。しかも、とれる政策には「法律の範囲内」という制約があります(憲法94条参照)。

 

東京都の「赤ちゃんファースト」はそういう制約のなかでとられた政策であり、かつ、コロナ禍という一時的な要因をきっかけとするものであることに、留意する必要があります。

 

これに対し、今回政府が提言している「出産準備金」クーポンの制度は、「経済対策」の一環であり、所得制限も設けないとのことですが、一時的な対症療法なのか、それとも、将来を見据えたものなのか、現状ではいまいち判然としません。

 

また、この2022年10月から「児童手当」の所得制限が強化され、「特例給付」が一部廃止になったばかりです。そのこととの関係についてはどのように考えられているのでしょうか。なお、児童手当については2022年9月26日の記事「児童手当の所得制限でなぜ『年収1,800万円』世帯が優遇されるのか?」で指摘したように、そもそも所得制限を設けることと自体に疑問があります。

 

さらに、先述したように、そもそも、育児休業の制度が労働者にとって利用しにくいものになっているという現状に対処する方が先ではないかという指摘も考えられます。

 

国の施策は、国全体のことを考え、かつ、総合的なものとして、整合的に設計しなければなりません。

 

出産・子育ての不安を解消し、少子化を抑えることに本気で取り組みたいのであれば、育児休業制度のさらなる拡充、高騰する教育費全般を抑える政策など、総合的な判断が求められるはずです。

 

「出産準備金」の政策を実行に移すとしても、それが単なる一時的な「ガス抜き」「バラマキ」に終わらないよう、政府には、今後の出産・子育てに対する取り組みに全般も視野に入れた、明確かつ一貫性のある政策の構築、実行が求められます。

 

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