(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年10月上旬にツイッターで「#高額医療負担制度廃止案に反対します」がトレンド入りしました。これは似た名前の「高額療養費制度」が廃止されるという誤解に基づく部分が多かったのですが、両者は、まったく別の制度です。それぞれの制度の概要と「炎上」の背景、「高額医療負担制度廃止案」が何を意味するのかについて解説します。

高額療養費制度とは

高額療養費制度は、健康保険の種類を問わずすべての人が対象となる制度です。

 

健康保険の対象となる治療を受けた場合、自己負担額は3割に抑えられますが、その場合でも、治療費自体が高額になってしまうと、負担が過大になってしまう可能性があります。

 

そこで、自己負担額の上限が設けられているのです。

 

自己負担額の上限は年齢・所得によって決まっています。詳しくは協会けんぽのHPをご覧ください。

 

たとえば、報酬月額が「27万円~51万5,000円未満」の場合、自己負担額は、以下の通りです。

 

80,100円+(医療費-267,000円)×1%

 

極端な話、治療費が月100万円の場合、本来の自己負担額は「3割負担」で30万円ですが、高額療養費制度を利用することで、自己負担額は

 

80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円

 

となります。

 

「限度額認定証」をあらかじめ医療機関の窓口に提出しておけば、自己負担を超える部分について建て替える必要もありません。

 

この高額療養費制度については、現状、廃止という話は一切出ていません。

 

高額医療負担金の制度とは

◆誤解は「Google」のせい?

次に、ツイッターで高額療養費制度と誤解されてしまった「高額医療負担金」の制度について説明します。

 

「Google」や「Yahoo!」で「高額医療負担金」で検索すると、1ページ目に出てくるのは「高額療養費制度」ばかりです。「高額医療負担金」はまず出てきません。それが、誤解を助長してしまった可能性があります。

 

報道機関は、制度の名称「高額医療費共同事業」を使うべきだったかもしれません。

 

◆負担金を受け取るのは「市町村」

これは、自営業者や学生、専業主婦といった人々が加入する「国民健康保険」に特有の制度です。つまり、いわゆるサラリーマンや会社役員、従業員が加入する「被用者保険」は一切関係ありません。

 

また、「国民健康保険」の加入者である個人とも直接の関係はありません。あくまでも「国・都道府県」と「市町村」との間の話です。

 

すなわち、高額な医療費が発生すると、国民健康保険の運営者である市区町村の財政を圧迫するおそれがあります。そこで、国民健康保険の対象となる1件80万円超の高額な医療費が発生した場合に、その市町村の財政の負担を緩和するために、国が医療費の1/4を負担する制度です(国民健康保険法70条3項参照)。

 

したがって、「高額医療負担金」の制度は、あくまでも国と地方自治体との関係についてのものであり、国民健康保険加入者である個人とは直接関係がないものです。

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