(※画像はイメージです/PIXTA)

この依存先がたくさんあって、ひとつひとつへの依存度が浅い人ほど、「自立」できている人であり、孤独をうまくコントロールできる人なのです。さまざまな選択肢がとれればとれるほど、心は安定し、孤独に対しても強くなります。精神科医の和田秀樹氏が著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)で解説します。

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選択肢の多さが孤独とうまくつき合うコツ

心のコンディションを整える方法についても、たくさんの選択肢を持てるようにしましょう。

 

「あいつらバカだから、しかたない」と開き直るのもひとつの手段だし、親友に「ちょっと悩みがあるんだよ」と話を聞いてもらうのもひとつの手段です。カウンセラーに相談してみるのもひとつの手段だし、「褒め合う仲間」をつくるのもひとつの手段です。もちろん、孤独と向き合ってとことん考えてみるのもひとつの手段です。

 

いろんな選択肢に、少しずつ孤独を託せるようになることが、孤独への耐性を強め、孤独をあなたの人生のスパイスにすることができるのです。それが孤独とうまくつき合うということです。

 

昨日から今日、今日から明日と、少しずつ少しずつ前進して、あなただけの「自己本位」を確立しましょう。

 

そうして、さまざまな視点で自分のことを考えられる「自分のプロ」になってください。あなたの心もあなたの孤独も、あなただけのものなのですから―。

 

■孤独と上手につきあうということ

 

コロナ禍が落ち着き、物理的な孤独がなくなっても、なんとなくいつも人に合わせてしまうとか、自分が出せない、自分をわかってくれる人がいないとなり、ふたたび精神的な孤独に陥りかねない人に、多少、先のことを考えるヒントになったとすれば、やはり嬉しいです。

 

読まれた方にはご理解いただけたと思いますが、孤独に対する耐性を上げろとか、孤独を楽しめとか、言うつもりで書いたわけではありません。

 

200万部を超えるベストセラーになり、21世紀を代表する自己啓発書とされる『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)という本があります。フロイトやユングにならぶ心理学の巨星であるアドラーは、「人には他人に勝ちたいという本能めいたものがある。それを発揮させないといけない」という考えを提示しました。

 

しかし同時に、「人は共同体感覚を身につけないといけない」ことを強調した人でもありました。私自身、「共同体感覚」と「嫌われる勇気」が矛盾するのではないかと最初は思っていました。

 

しかし、この連載やアドラーの著書を読むと、共同体感覚というのは、共同体に合わせるという話でなく、自分がちゃんと共同体のなかに仲間として入っているという感覚だとわかります。

 

「みんな仲間だ」と思えれば、相手を助けようと思う気持ちや、相手にひどいことをしないようにしようという気持ちにもなれるわけですが、逆に、本当の意味で仲間だと思えていれば、自分が言いたいことを言っても、あるいは周囲に合わせなくても、仲間はずれにならないと信じられるわけですから、多少、嫌う人がいても平気でいられるのです。

 

実は、私が長年、研究しているコフートという学者も同じような考え方をしています。

 

治療者と患者さんが「同じ人間」だと思えることで、自分が自分でいられると、晩年、強調するようになりました。

 

孤独と上手につきあうというのは、あえて孤独になれとか、孤独に耐えられるようになれということではなく、たとえ孤独であっても、「たったひとりの理解者を探す」というように、孤独に対するヘッジのようなものをうまく作ってほしいということです。

 

逆に、いくら表面上の仲間が多くても、自分が出せない、本音が言えない、悩みを聞いてもらえない(打ち明けられない)というのであれば、本質的に孤独だと言えるでしょう。

 

でも、思い切って打ち明けることのできる相手が見つかれば……。たとえ、打ち明けてみてダメなら次を探せばいいと思えれば、多少、仲間の中で浮いていても、一気に楽になれるはずです。

 

孤独を恐れるばかりに、自分が出せずに内面的に孤独になるより、孤独になってもいいからと、言いたいことを言って、本当の親友、仲間や味方を探すほうがずっと建設的です。
 

 

和田 秀樹

和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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※本連載は精神科医である和田秀樹氏の著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

孤独と上手につきあう9つの習慣

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