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連載私道・境界・近隣紛争の法律相談【第2回】

私有地を横切る「位置指定道路」の廃止は可能か?

位置指定道路

私有地を横切る「位置指定道路」の廃止は可能か?

今回は、敷地の中に存在する「位置指定道路」が建物の建築に及ぼす影響について見ていきます。※本連載は、弁護士・野辺博氏の編著書籍『私道・境界・近隣紛争の法律相談』(学陽書房)の中から一部を抜粋し、私道や境界、放置された空き家などに発生した様々なトラブルについて、法的見地から解決方法を解説します。

Q 複数戸の老朽化した建物とその敷地を取得したので、建て替える際は全体の敷地に建つマンションを建てようと思っているのですが、当該敷地の中に位置指定道路があるので、そこには建物の建築はできないといわれました。どういうことでしょうか。また建築を認めてもらう方法はありますか。

位置指定道路には建物を建築できない

道路位置指定を受けると、当該敷地部分は建築基準法上の道路ということになります。

 

その結果、第1に、当該位置指定道路に原則2メートル以上接した敷地内には建物を建築することができます。道路位置指定は正に建物建築のためにあると言ってもよいでしょう。

 

第2に、位置指定道路には建物を建築することはできません。同様に、建物敷地を造成するための塀などの擁壁や門なども、道路に突き出して築造することはできません(建築基準法44条)。道路としての効用を全うさせるためです。

 

これに違反した者に対しては、特定行政庁は、当該工事の施工の停止を命じ、または当該建築物の除去等の是正措置を命じることができます(建築基準法9条1項)。

 

違反者がこの是正措置を履行しないときは、代執行により、強制的に除去等される場合もあります(同法9条12項)。また右是正命令に違反した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることとされています(同法98条)。

 

第3に、道路と指定されたことによる反射的利益として、一般公衆は当該位置指定道路を通行することができます。

 

この場合、第三者に私法上の通行権が当然に発生するというわけではありません。したがって、第三者が位置指定道路の所有者に対し、通行権の確認を求めたり、当然に道路上の妨害物の排除等を求めたりすることはできません(例外規定あり。『私道・境界・近隣紛争の法律相談』の32 通行妨害排除」項目を参照)。

 

第4に、位置指定道路の所有者であっても、勝手に当該道路を廃止したり、変更したりすることはできません(建築基準法45条)。もともと、位置指定道路は、建物の建築を可能とするために、土地所有者等の関係者自身が当該道路部分を特定して申請したものであり、特定行政庁はその申請に基づいて審査しそれを認めるという手続構造をとっているものです。

 

そのような手続を経て道路と認定されたものを、その道路所有者等の一存によって、場合によっては接道要件を欠くかもしれないことになる道路の廃止・変更を認めるわけにはいきません。

道路位置指定は廃止・変更可能だが関係者の承諾が必要

このように、道路位置指定を受ければ、これによって建築可能な建物敷地を確保できるというメリットがあるのですが、反面、当該道路所有者は、建築物の築造制限等の不利益を受け、本来の土地所有者に認められている土地の自由な使用収益権能は奪われてしまっています。

 

ところが、その後の地域ないし現況土地の変化に伴い、当該指定道路の必要性がなくなっていく場合も想定されます。例えば、当該位置指定道路を含む一帯の土地にマンションを建てようとする場合は、建築不可の位置指定道路部分の存在によって、自由な建築設計もできなくなってしまいます。

 

また当該位置指定道路に接している建物敷地部分であっても新たに別の公道等に対する接道要件を満たし、後者の道路の方が通行、利便性からも優っている場合は、前者を位置指定道路としておく意味合いはなくなってしまいます。

 

さらに、土地状況の変化に伴い、関係者にとっては、位置指定を受けた道路部分ではなく、別の敷地部分を位置指定道路にしてもらいたいという要請もでてくるでしょう。

 

そこで、このようなときは、道路位置指定の申請と同じような手続にしたがって道路位置指定の廃止または変更の申請というものが認められています。敷衍すれば、建築基準法及び同施行規則では、建築基準法上の道路につき、その廃止または変更に関する手続規定をおいていません。

 

しかしながら、その必要性は大いに認められるところであり、他方だからといって、いったん指定された道路の行政処分を無視するような効果を肯認するわけにもいきません。

 

そして、行政法上は、当初の指定処分が適法有効なものであったとしても、その後の事情により、当該指定処分の必要性がなくなったときは、指定の撤回は明文の規定がない場合も認められるべきだと考えられています。

 

ただ、その行政処分の効力如何は明確にしておく必要がありますので、各地方公共団体では、条例によって、道路位置指定に関し、指定申請だけでなく、その廃止・変更申請もなしうるものとし、その申請手続が明記され、多くの条例が、指定申請の場合と同様な申請書及び添付書類を要求しています。

 

したがって、位置指定道路の廃止・変更申請においては、当該申請時点における廃止対象道路の敷地所有者及びその抵当権者等の権利者の承諾書も必要となることに留意しなければなりません。

野辺 博

野辺法律事務所 所長 弁護士

埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学法学部卒業。1985年弁護士登録、東京弁護士会所属。1989年 野辺法律事務所を開設。2007~2010年、最高裁判所司法研修所民事弁護教官(上席)、2011~2015年度、慶應義塾大学法科大学院教授。
担当案件として、会社顧問業務のほか、個人の不動産・相続遺言関係を多く取り扱う。

著者紹介

連載私道・境界・近隣紛争の法律相談

私道・境界・近隣紛争の法律相談

私道・境界・近隣紛争の法律相談

野辺 博[編著] 野間 自子,道端 慶二郎,小山 裕治,濱口 博史

学陽書房

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