経営する駐車場に「放置された車」を撤去する方法

今回は、経営する駐車場に「放置された自動車」を撤去する方法について見ていきます。 ※本連載は、弁護士・野辺博氏の編著書籍『私道・境界・近隣紛争の法律相談』(学陽書房)の中から一部を抜粋し、私道や境界、放置された空き家などに発生した様々なトラブルについて、法的見地から解決方法を解説します。

Q 私は、間貸し駐車場を営業しています。ところがこの駐車場にRV車1台が6カ月も放置されたままです。もちろん駐車料金は支払われていません。しかもその持主が誰かも分かりません。この自動車を撤去したいのですが、どうすればいいでしょうか。

勝手にレッカー移動すると損害賠償が請求される!?

このようなケースの場合、警察に電話してレッカー移動をお願いしたいところですが、下記で述べるような犯罪を構成するような悪質な場合はともかく、残念ながら警察は私有地内の問題については原則不介入という立場です(民事不介入)。しかしながらまずは警察にそのRV車が盗難車であるかの問い合わせをするとよいと思います。盗難車であれば刑事事件として警察で対応してくれるからです。

 

警察が対応してくれない場合、法的手続きを経ないで自分でその自動車を移動させることは禁じられています(自力救済の禁止)

 

あなたが勝手に民間のレッカー会社に依頼して駐車場から撤去しますと、無断駐車をした相手から不法行為に基づく損害賠償請求をされないとも限りません。しかもレッカー移動中に車に傷がついたような場合、その修理費用相当額の損害賠償責任も発生します。

 

そのために多くのレッカー業者は車両の所有者による移動先の指示及び立会を要求しています。そうでない場合でも「何があってもその業者が責任を負わない」という趣旨が記載された書類にあなたがサインすることを要求されるケースもあります。そして、レッカー業者への支払や移動先での保管費用もとりあえずあなたが負担することになります。

張り紙が効かないなら、所有者を調べて内容証明を送付

では泣き寝入りをするしかないのでしょうか。まずは、そのRV車に張り紙などで警告をしてください。文面は「1ヵ月以内にご連絡もなく、この車を撤去されない場合は、こちらで撤去します。また無断駐車車両につき、罰金○万円を支払って頂きます。○○」などでよいでしょう。もっとも罰金の額はせいぜい正規駐車料金の2倍から3倍以内がよいでしょう。あまりに高額の請求は暴利行為として無効となります(民法90条)。

 

なお、この張り紙はあくまでも警告であり、これを読んだ車の所有者に自主的にかつ速やかに撤去してもらうためのものです。自分で撤去することは先に述べた通り、許されていませんので注意してください。不法行為の損害賠償請求で認められる金額は、原則として正規料金相当額、不法駐車と相当因果関係のある実費及び一部の弁護士費用までだからです。

 

また不相当な金員を執拗に要求した場合、あなたの方が恐喝罪(刑法249条・10年以下の懲役)で罰せられるリスクもあります。なお、フロントガラスにガムテープで止めるとテープ跡などが残り、逆に文句をつけられることもありますので、ワイパーに挟んだり、跡が残らないもので止めるなど相手から付け込まれる隙を与えないようにすべきです。

 

それでも効果がない場合、所有者を調べて、直接持主に内容証明郵便で警告することになります。所有者は陸運局で自動車の「登録証明取得手続き」を行うことで特定できます。この場合、無断駐車している自動車のナンバープレートの番号と放置車両の場所、放置期間、見取り図などと証拠写真を添付します。無断駐車を行う人の大半は「どうせ、誰だか分からないだろう」という軽い気持ちで無断駐車をしている場合が多いので、直接相手に警告を発するこの方法は大変効果的です。

 

そして、あなたのケースのように長期間駐車しているような悪質なケースの場合、車庫証明を偽っている可能性もありますので、この時点で再度、警察に確認してみるのも一つの方法です。なお、このケースの場合、長期間、その場所での駐車場としての稼働を妨害しているわけですから威力業務妨害罪(刑法234条・3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立する可能性もあると思います。

 

さらにあなたの駐車場が一定の囲いのある敷地内やマンションや店舗などの建造物の中にあれば建造物侵入罪(刑法130条・3年以下の懲役又は10万円以下の罰金)が成立します。よってRV車の所有者を刑事告訴することも考えられます。

 

なお、当該RV車がローン付きで所有権が信販会社に留保されており、しかも既に期限の利益が喪失して残債務の弁済期が到来している場合、あなたは信販会社やその承継人に対し自動車の撤去と駐車場の使用料相当損害金の支払いを求めることができます【最判平成21年3月10日判時2054号37頁、東京地判平成24年11月28日判タ1399号120頁】。

最終手段としては差押さえ、競売処分もあるが・・・

内容証明郵便が届かない場合や届いているのに返事もなく、撤去もされない場合は、裁判所に対して、駐車場契約違反や土地所有権の侵害を理由とする損害賠償請求(民法709条)、土地所有権に基づく車の撤去請求などの訴えを提起することが考えられます。

 

所有者が行方不明の場合は、公示送達手続き(民訴法110条ないし113条)によって判決など債務名義を取得して、その認められた損害賠償請求金額をもって、RV車を差押さえ、競売して処分することができます。判決が出た後も所有者が撤去しない場合や損害賠償金を支払わない場合も同様です。また、自動車を撤去する強制執行や所有者のその他の財産を差し押さえて取り立てること等も可能です。

 

以上の通り、放置された自動車を撤去するのは容易ではありません。日ごろから警告文をよく見える場所に掲示する、駐車場内に防犯カメラを設置する、早めに対応する等駐車場をよく管理されて自動車を長期間放置されないように努めるのが一番です。

野辺法律事務所 所長 弁護士

埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学法学部卒業。1985年弁護士登録、東京弁護士会所属。1989年 野辺法律事務所を開設。2007~2010年、最高裁判所司法研修所民事弁護教官(上席)、2011~2015年度、慶應義塾大学法科大学院教授。
担当案件として、会社顧問業務のほか、個人の不動産・相続遺言関係を多く取り扱う。

著者紹介

三宅坂総合法律事務所 パートナー 弁護士

私立共立女子高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、1986年4月弁護士登録(東京弁護士会)。1992年ワシントン大学ロースクール修士課程修了。1999年2月三宅坂総合法律事務所パートナーとなり現在に至る。
企業法務・倒産・知的財産権等を専門に取り扱う。

著者紹介

連載私道・境界・近隣紛争の法律相談

私道・境界・近隣紛争の 法律相談

私道・境界・近隣紛争の 法律相談

野辺 博[編著] 野間 自子,道端 慶二郎,小山 裕治,濱口 博史

学陽書房

相隣関係から現代型ご近所トラブルまで、近隣紛争の法的論点を網羅! 私道の通行、袋地(囲繞地)、境界、排水流入など私道・境界をめぐる紛争に、空き家、悪臭、騒音、日照、眺望などのご近所トラブルを加えた近隣トラブル全…

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