前回は、これからの資産運用において、「債券」と「株式」ではどちらが有利となるのかを検証しました。今回は、相場下落時に「キャッシュポジション」をとれる投資信託の条件などを見ていきます。

優れた投資信託は相場の下落にそのまま引きずられない

本当に買うべき株式で運用する投資信託は、次の3つの条件から見極めます。すべてが揃っていなければ買ってはいけないわけではないですが、その要素が欠けていることを認識し、悪影響が出る場面では注意しなければなりません。それでは、その理由や見極め方を順を追って解説していきましょう。

 

①キャッシュポジションをとれるかどうか

②ファンドマネージャーの腕は良いか

③集中投資をしているか

 

1つ目の条件になるのがキャッシュポジションをとれるかどうかです。

 

キャッシュポジションというのは、要するに現金です。連載第5回で、多くの投資信託はフル投資型であるという話をしました。特に株式に投資する商品に当てはまることですが、株式相場が下落を続けているときでも、フル投資型のファンドマネージャーは、株式への投資を止めません。

 

A株が含み損を抱えたので損切りをしてB株に乗り換えたところ、また含み損となり、損切りして次はC株を買って・・・。このような下落スパイラルにはまると、株式投資自体を止めない限り、抜け出すことが困難になります。

 

もちろんファンドに組み込む株式は1銘柄、2銘柄ということはないし、ファンドマネージャーは運用の専門家なので利益を出している銘柄もあるとは思いますが、下落スパイラルにはまっているときに現金化せずフル投資を継続すると、利益を上げることが非常に難しくなります。そのときに重要になるのが、株式相場が下落しているときに、投資資金を引き揚げて現金を持てるかどうかです。

 

相場が悪化しているとき、ファンドマネージャーの判断でファンドが保有する株式を売却して現金化できる仕組みがあれば、損失を抑えることができます。保有している銘柄が下落を始めたら、利益確定売りをして利益を確保、次に相場が好転したときに、再び有望銘柄を買うことができるのです。

 

以下の図表で見ると、下波を打っている線が株式市場の値動きです。その上の点線が、キャッシュポジションをとれる投資信託の基準価額の動きです。図を見てわかるように、相場が横ばいでも、株価の上昇局面を捉えて投資をし、下落局面で売却して現金化することを繰り返せば、基準価額は上昇することが理論上は可能になるので、この仕組みがあることが重要なのです。

 

[図表]優れた投資信託は相場の下落に負けない

「月次レポート」からフル投資型か否かを見極める手も

キャッシュポジションをとれる投資信託を見分けるには、まず目論見書をよく読むことです。キャッシュの比率を上げることができるものは、以下のように記載があります。

 

「みのりの投信」(ポートフォリア)の目論見書には、

 

「株式の実質組入比率は、原則として信託財産の純資産総額の50%を超えるものとします」

「長期的な視野で現金比率をコントロールすることも含めて、プロフェッショナルに資産運用を任せる『絶対収益型』の投資信託」

 

とあり、「ザ・2020ビジョン」(コモンズ投信)も、

 

「株式への実質投資割合は、通常の状態で投資信託財産の100%~30%の範囲内で機動的に変更できるものとします」

「市場の下落リスクに基づき、株式の組み入れや現金等の比率を調整。リスクを回避するタイミングのコントロールを目指します」

 

と、説明しています。

 

また、フル投資型の投資信託は目論見書の【投資方針】に「90%以上を投資する」や「株式の組入比率は、原則として高位を維持します」という趣旨の内容が書かれています。また、そのような表現が使われていなくても実際はフル投資している投資信託もあります。

 

そのような場合の判断材料は、月次レポートです。大抵、過去の基準価額とベンチマークのチャートが比較され載っています。その比較チャートが同じように上がったり下がったりしているものはフル投資型だと考えてよいでしょう。

 

個人投資家が自分で判断するのが難しい場合も多いので、販売員や専門のアドバイザーに聞いてみるのもいいでしょう。大切なことは、キャッシュポジションをとれる投資信託があることを、投資家自身が理解していることです。

本連載は、2015年7月24日刊行の書籍『金融機関が教えてくれない本当に買うべき投資信託 』から抜粋したものです。本書は情報の提供および学習を主な内容としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資の成功を保証するものではなく、本書を用いた運用は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本書の内容に関して運用した結果については、著者および株式会社幻冬舎メディアコンサルティングはいかなる責任も負いかねます。なお、本書に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託

金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託

福田 猛

幻冬舎メディアコンサルティング

ここ数年、投資環境が良くなる中で、投資に興味を持ち、株式や投資信託を購入する人が増えています。特に投資信託は「少額投資」や「分散投資」ができる気軽さもあって幅広い年齢層に人気があり、売れ行きは好調です。しかし、…

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