今回は、自社株承継に役立つ「自社株評価」を下げる方法として会社が持つ「株」や「不良在庫」についての扱い方を見ていきます。※本連載は、会計事務所・経営者向けセミナー講演を年50回以上行い、相続・贈与に取り組む専門家ネットワーク発足などの活動にも携わる株式会社アックスコンサルティング代表取締役・広瀬元義氏が執筆・監修した『会社と家族を守る!事業の引継ぎ方と資産の残し方ポイント46』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、オーナー社長が知っておくべき「自社株承継」の9つのポイントを解説します。

塩漬けの上場株があれば、売却して含み損を計上

Point 資産整理策② 株の含み損を計算する

 

いまから20年以上前のバブル全盛期。銀行が、皆様の会社に、土地さえあれば我先に融資を提案してきた時代がありました。

 

金融機関から借りてくれと頼まれたものですから、土地などを担保に本来買わなくていい上場株などを購入してしまい、それがバブル崩壊とともに暴落、処分できなくて困っているという会社は意外に多いものです。バブル崩壊が原因でなくても、長期間保有していて配当金を毎年受け取っている上場株などがあれば、現在の価格を確認するようにしましょう。

 

なぜなら、類似業種比準方式が採用される会社の場合、純資産の計算には「簿価」が使用されることになっているため、購入時の価格がそのまま当てはめられてしまう可能性があり、高く評価されてしまっている可能性があるからです。売れば損をすることになりますが、そのまま使えないお金になっているのは、もったいない話です。損をしてでも売って、設備投資などに回すことを検討してみてはどうでしょうか。

 

株式の売却損を計上することにより、自社株の評価を下げることができますし、その売却額で設備投資など新しい生産設備などを購入すれば、さらにその分、減価償却などで評価を下げることができます。

「不良在庫」をもたない仕組みづくりの徹底を

Point 資産整理策③ 不良在庫の処分

 

不良在庫――経営者であれば、誰もが頭を抱えている問題です。

 

「いつか風向きが変わり、売れるだろう」という甘い将来予測により、いつまでも倉庫の一角に眠っている商品や材料などが、皆様の会社にもあるのではないでしょうか? ですが、業績のいい会社は、不良在庫を極力持たないようにしています。不良在庫をもたない仕組みづくりを徹底しているからです。

 

不良在庫がある、というだけで経営者としては気が重くなりますし、金融機関からも融資の審査などの際、よい評価を得られません。そのまま在庫として保持し続けていると、資産となって計上され続け、純資産額を引き上げる要因になってしまいます。

 

事業承継を考える皆様には、筆者著書『会社と家族を守る!事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46』でも述べた含み損を抱えた株同様、できるだけ早く処分すべきです。在庫の帳簿価額は商品廃棄損として処理した上で、在庫の管理費用、倉庫代の圧縮と合わせてトリプルの効果を生み出せます。

 

ただ、税務調査などの際、商品廃棄損として認められるために、主に以下の2つの要件に注意してください。利益調整の手段として用いられることが多いため、税務署が目を光らせている項目だからです。

 

① 廃棄をした理由

② 廃棄が実際に行われた証明

 

①については、保管中に温度管理ができなく傷んでしまった、流行遅れになってしまい売れなくなってしまった、という「合理的な理由」が必要です。

 

②については、税務署は「本当に廃棄したのか」を常に疑っています。廃棄業者から正式な証明書や、処分中の写真などをもらうように心がけましょう。

 

ただし、廃棄理由に妥当性があり、廃棄業者から証明書をもらっていたとしても、実際に期末までに実行されなければ、次期に計上せざるをえない場合がありますので、注意してください。自社株の贈与等、事業承継対策のタイミングと合わなければ意味をなさなくなります。

本連載は、2017年2月26日刊行の書籍『会社と家族を守る!事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46』から抜粋したものです(2017年6月7日第2版)。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

広瀬 元義

株式会社あさ出版

誰に会社を任せるべきか、何から手をつけるべきか? 事業承継のプロたちが教える基本から具体策まで!

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