前回は、B/Sを理解し「自社の財務実態」をつかむ方法を説明しました。今回は、「企業規模」と「B/Sの規模」にバランスが求められる理由を見ていきましょう。

「舞の種類」によって「舞台の大きさ」は変わる!?

このB/Sは「現在の企業規模、あるいは目指す企業規模に相応しい大きさがある」という点を理解する必要がある。

 

京都のいわゆる〝お座敷遊び〞をイメージしてもらいたい。京都市内には祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東という5つの花街があり、それぞれの街にお茶屋が軒を連ねている。お客は美味しい料理と酒に舌を鳴らしながら、芸妓さんの踊りを堪能したり会話を楽しんだりできる。

 

お座敷遊びを担当するのは、舞を踊る芸妓さん(立ち方さん)、三味線と歌を担当する地方さん、芸妓見習い中の舞妓さんの3名。それぞれの役回りを見事に、繊細に演じながら宴席を盛り上げる。お酌をしてもらいながらお酒と会話を楽しみ、場がこなれてきたらいよいよ芸の時間だ。

 

「月はぁおぼろにぃ東山ぁ〜」

 

地方さんが三味線をポロンと弾き鳴らして『祇園小唄』を歌い始めれば、芸妓さんはおもむろに立ち上がり、雅やかな踊りを舞い始める。指先まで神経の行き届いた所作、首をかしげる色っぽい芸妓さんの姿に、お酒が入った男性陣はポーッと見とれてしまうに違いない。

 

宴席の参加人数にもよるが、こうした芸妓さんの舞を楽しむのは四畳半のお座敷がちょうどいい。宴会場のような広い場所に座を設け、宴席を開いても閑散としてどこか興ざめしてしまう。

 

一方、毎年4月に京都・祇園甲部歌舞練場で開催される「都をどり」は、四畳半では舞台が小さ過ぎる。都をどりとは五花街の芸妓さんや舞妓さんたちが100名あまりも参加する舞踊公演で、それは壮大で見応えがある。

 

この都をどりを四畳半のお座敷でやろうものなら、金屏風は倒れ、ふすまはボロボロに穴が開いてしまうだろう。そもそも芸舞妓さんが100名も入りきらない。

 

つまり、「どのような舞を踊るかによって、舞台の大きさはおのずと決まる」ということだ。

P/Lは「踊り」、B/Sは「舞台」と考える

これを企業経営に当てはめると、次のようになる。

 

●P/Lは「踊り」、B/Sは「舞台」

 

現在どの程度のP/L規模なのか、あるいは今後どのようなP/Lの規模を目指すのかによって、企業活動の舞台であるB/Sの規模の大小が決まってくるということである。

 

[図表]踊り(P/L)と舞台(B/S)の関係

 

この話は次回に続く。

本連載は、2017年3月16日刊行の書籍『どんな不況もチャンスに変える 黒字経営9の鉄則』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

どんな不況もチャンスに変える黒字経営9の鉄則

どんな不況もチャンスに変える黒字経営9の鉄則

石原 豊

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の企業の約7割は赤字という現実があります。 現在の日本企業の回復基調はあくまでも一時的なものであり、ほとんどの中小企業は根本的な解決には至っていません。また、人手不足や消費の冷え込みといった課題があるように…

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