前回は、「0円賃貸」にテナント早期退去時のオーナー負担がない理由を取り上げました。今回は、「0円賃貸市場」の形成によってもたらされる、不動産オーナーのメリットを見ていきます。

「入居者の囲い込み」「オーナー同士での助け合い」

今回からは、0円賃貸が普及した先の近未来に焦点を当て、オーナー、入居者、管理会社に具体的にどのような影響が及ぶのか、今後の展望も含めてお伝えしたいと思います。

 

0円賃貸物件の退去予定者に物件一覧表のDMを送る旨を説明しましたが、今後の展開としては、0円賃貸物件をまとめたポータルサイトの立ち上げも検討しています。“宝探し状態〟から早く抜け出して、入居希望者が初期費用ゼロ円物件を手軽に検索できる仕組みをつくり上げていきます。

 

そのためには0円賃貸物件の絶対数が必要となりますから、オーナーへの提案とともに、他社の管理会社への導入コンサルティングも行っています。0円賃貸の仕組みを他社管理会社に提供すれば、物件数が増え、0円賃貸のマーケットを大きく拡大できるはずです。

 

では0円賃貸の物件数が増え、初期費用ゼロ円物件のマーケットが形成されるとオーナー、入居者、管理会社にどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

オーナーのメリットは「入居者の囲い込み」と、「オーナー同士での助け合い」です。

 

0円賃貸物件を利用した入居者は初期費用ゼロ円の価値を感じ、次も0円賃貸物件への入居を希望するはずです。初期費用ゼロ円物件同士での移り住みが当たり前の社会になっていけば、マーケット内で入居者を囲い込み、流動性を高められるようになります。

 

さらに需要が供給を上回る状況を演出できれば、「入居待ち」が出るほど市場を活性化できるでしょう。

 

とはいえ、オーナーにとっては自分の所有物件のみで入居者を流動させるのはもちろん無理があります。しかし入居者が0円賃貸物件を選んで移り住んでいけば、結果としてオーナー同士での助け合いになっていくことが予想できます。

 

さらに0円賃貸物件に価値を見いだした新たな入居者がマーケットに続々と流入してくるでしょう。そうなればマーケットがさらに拡大し、市場がますます活性化していきます。社会的な認知度も一気に高まり、どこかのタイミングで、入居時費用ゼロ円の物件が爆発的に拡大する時期を迎えるのではと考えています。

中長期にわたって空室率を下げられる可能性も!?

オーナーにとって、入居者の退去は大きなリスクでした。しかしマーケットが拡大し、入居者の流動性が高まれば、中長期にわたって空室率を下げられるという可能性を秘めています(図表参照)。

 

[図表]今後の賃貸市場のイメージ

 

そうなれば、物件の収益力と価値を低下させる「退去」が大きなリスクではなくなっていきます。再投資によって資本改善も継続していけば、0円賃貸の企画力との相乗効果で入居者が殺到するような物件に仕上げることも可能でしょう。

 

こうしてマーケットが形成され、入居者の流動性が高まれば、オーナーの二極化がさらに明確になっていくことが予想されます。0円賃貸物件のオーナーはますます入居者を獲得し、そうではない物件のオーナーはますます空室率が高くなっていく―。初期費用ゼロ円物件でなければ借りたくないという入居者が賃貸市場で一定のシェアを占めるようになれば、時代に乗り遅れたオーナーの損失は計り知れないでしょう。

 

視点を変えれば、いち早く0円賃貸市場に参加することで、多くの入居者を獲得し、収益を最大化できるのです。初期費用ゼロ円の世界に早く飛び込めば、先行者利益を獲得できるということです。

管理会社側も入居者と長期の関係を築けるメリットも

0円賃貸物件を扱う管理会社のメリットも同様、「入居者の囲い込み」です。マーケットの流動性が高まることで、自社管理物件の入居者が退去したとしても、その退去者に対してまた別の0円賃貸物件を紹介できるという利点があります。次も自社管理物件を紹介できるとは限りませんが、そうやって入居希望者を紹介し合うことで、マーケット内の流動性をどんどん活性化していくことができます。

 

オーナーにとっても管理会社にとっても、これまでは一度切りだった顧客(入居者)との関係を長く続けられる可能性があるということです。

 

入居者のメリットはすでにお伝えしてきたとおりです。初期費用ゼロ円物件の数が増えれば、自分の価値観に見合った住まい探しがどんどん容易になっていきます。

 

先行者利益を得るのは何も難しいことはありません。唯一の条件は、オーナーが一歩踏み出せるかどうか。空室に悩む現状を打開するためにも、いまこのタイミングでぜひ行動してほしいのです。

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池田 洋三

幻冬舎メディアコンサルティング

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