介護との切り離しは不可能・・・「高齢者医療」の実態

超高齢化社会を迎えた日本では、このままでは医療費の大幅な削減が必要になり、病院でも家でも満足な支援が受けられなくなる可能性があります。本連載では、高齢者医療において不可欠な介護との連携について見ていきます。

年齢や体力に応じた治療方針が必要な「高齢者医療」

高齢者医療で起きている問題の根本には、日本の医療のなかに「高齢者に対する医療」という概念がなかったということが挙げられます。

 

高齢者医療にとって必要なのは、「先進的な治療」だけではありません。高齢者が病気をせず、自宅で健康に生活が送れるような状態を維持し、病気になってしまった場合は、治療が負担にならないよう年齢や体力に応じて治療方針を変えることが必要なのです。

 

一方加齢による身体の衰えによって自分の足で歩くことのできない患者、自分で食事がとりづらい患者、認知機能の低下が著しい患者などには、治療ではなく介助が必要になります。つまり、患者にとって適切なサポートは医療面か介護面のどちらなのかを見極め、どちらも提供できるように整備をしておく必要があるのです。

介護態勢が整っていない在宅治療は、家族の負担に…

医療費削減のために国が進めようとしている施策は、できる限り入院させることは避け、自宅や高齢者住宅で療養してもらうというものです。しかし、ただ「在宅」へ帰すだけでは、病院を出た患者は適切な介護のサポートを受けることもできず、自宅に追いやられ、その結果家族に大きな負担を強いることになります。

 

私たちのような高齢者を多く診る病院において、介護態勢が整っていない家族への退院勧告は、患者と家族を切り捨てることになってしまうため、簡単にできるものではありません。医師にはすべての患者をとりこぼすことがないよう、退院してからの医療、介護、生活などを家族とともに考え、誰もが満足できる老後を過ごせるよう道案内をすることが求められます。

 

どんなに先進的な医療を整えても、介護施設が整っていなければ高齢者の暮らしを支えることはできません。高齢者医療は、介護の部分を切り離して語るべきではないのです。

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連載医療・介護の連携で実現する――高齢者のための地域医療

医療法人清水会 理事長
相生山病院 院長 医学博士

1970年10月ニューヨーク生まれ。1歳半で帰国し、以後名古屋で育つ。
1989年愛知県立旭丘高等学校卒業。1996年藤田保健衛生大学医学部医学科を卒業後、1998年より名古屋第一赤十字病院循環器科へ赴任。翌年に藤田保健衛生大学医学部循環器内科に帰局し、内科認定医、循環器専門医を取得。
2007年、相生山病院副院長に就任、2013年には院長に就任。「患者に寄り添う医療」をモットーに、看護師や医師の対応、サービス等を改善するなどホスピタリティ向上に尽力している。
2016年3月、医療法人清水会理事長に就任。現在は高齢患者の健康寿命を延ばすため、認知症かかりつけ医・認知症サポート医として認知症予防や運動療法の普及にも積極的に取り組んでいるほか、介護施設も多数運営。地域で先駆けて「地域包括支援センター」として市の委託事業に参画。地域の医療・介護サービスの充実を目指している。趣味はトライアスロン。

著者紹介

医療・介護連携で実現する 高齢者のための地域医療

医療・介護連携で実現する 高齢者のための地域医療

佐藤 貴久

幻冬舎メディアコンサルティング

2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、全国民の3人に1人が65歳以上になると予想されています。これまでと同じ医療体制を続けていては、高齢者は自分の望む最期を迎えられないばかりか、増える高齢者によって医療費が膨…

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