高齢者の治療で「病院・介護施設」が担うべき役割

前回は、介護との切り離しは不可能な「高齢者医療」の実態を取り上げました。今回は、高齢者の治療で「病院・介護施設」が担うべき役割について考察します。

高齢者の多くは「家で最期を迎える」ことを望む

高齢期の生活において大切なことは、「住み慣れた場所で、気心の知れた人に囲まれて自立した生活を送ること」であると私は考えます。そしてその場所は、多くの人にとって自宅であることがほとんどです。

 

ですから入院している患者に対しても、基本は「家に帰す」ことを前提に治療方針を立てていかなければなりません。この前提は絶対に忘れてはならないものです。それは国が家に帰すことを推奨しているからではありません。高齢者の多くが「家に帰る」ことを望み、家で最期を迎えることを望んでいるからです。

 

[図表]最期を迎えたい場所

※全国の55歳以上の男女が対象(有効回収数:1,919人)
※ 設問は、「万一、あなたが治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいです
か」
出典:厚生労働省「平成28年版厚生労働白書」
※全国の55歳以上の男女が対象(有効回収数:1,919人)
※ 設問は、「万一、あなたが治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいです か」
出典:厚生労働省「平成28年版厚生労働白書」

病院・施設の役割は患者を自宅へ帰す「橋渡し役」

特に、病院と家との中間に位置する介護老人保健施設なども、できるだけ家に帰すことを目的とし、自立度を上げるような介護と看護を行う必要があります。「寝かせきり」にしないのは当然のことですが、医療機関に負けないレベルのリハビリの充実も必要です。

 

たとえば自宅内の段差に対応する身体機能、着替えや入浴、排泄への対応、認知機能の維持・回復など、一人ひとりに必要なプランを構築し実践していくようなきめ細かいリハビリ力が求められることになります。

 

そのためには、その人の生活背景を入念にチェックする必要が出てきます。ひとり暮らしなのか、介護する家族がいるのか。必要な住宅環境やさまざまな利用できる介護サービス、かかりつけ医は誰になるのかなど、チェックすべき点はたくさんあります。

 

もし病気で入院し、体力が落ちてしまったとしても、毎日の生活を問題なく送れる程度の体力や筋力をつけ、その間に住居の環境を介護可能な状態に整えなければなりません。入院患者を自宅へ帰すための「橋渡し」が、高齢者の入院を受け入れる病院や介護施設の役割であるべきなのです。

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連載医療・介護の連携で実現する――高齢者のための地域医療

医療法人清水会 理事長
相生山病院 院長 医学博士

1970年10月ニューヨーク生まれ。1歳半で帰国し、以後名古屋で育つ。
1989年愛知県立旭丘高等学校卒業。1996年藤田保健衛生大学医学部医学科を卒業後、1998年より名古屋第一赤十字病院循環器科へ赴任。翌年に藤田保健衛生大学医学部循環器内科に帰局し、内科認定医、循環器専門医を取得。
2007年、相生山病院副院長に就任、2013年には院長に就任。「患者に寄り添う医療」をモットーに、看護師や医師の対応、サービス等を改善するなどホスピタリティ向上に尽力している。
2016年3月、医療法人清水会理事長に就任。現在は高齢患者の健康寿命を延ばすため、認知症かかりつけ医・認知症サポート医として認知症予防や運動療法の普及にも積極的に取り組んでいるほか、介護施設も多数運営。地域で先駆けて「地域包括支援センター」として市の委託事業に参画。地域の医療・介護サービスの充実を目指している。趣味はトライアスロン。

著者紹介

医療・介護連携で実現する 高齢者のための地域医療

医療・介護連携で実現する 高齢者のための地域医療

佐藤 貴久

幻冬舎メディアコンサルティング

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