今回は、相続税の「連帯納付義務」と「附帯税」をめぐる問題を見ていきます。※本連載は、みどり総合法律事務所の所長・弁護士の関戸一考氏、同じく弁護士の関戸京子氏の共著、『新・税金裁判ものがたり』(メディアイランド)の中から一部を抜粋し、具体例を題材に、税金裁判の現状と課題を解説します。

本来の納税義務者に適正な申告を促すことが目的だが…

(3)連帯納付義務と附帯税(延滞税・加算税)をめぐる問題


ア 附帯税も連帯納付義務の対象に含めていいのか


税務署に対して情報提供し協力を続けてきたA子さんが、Cさんが適正に申告・納付をしていなかったからといって、無申告加算税や延滞税まで連帯納付義務を負わなければならないでしょうか。


<本件でどう考えるべきか>


本件では、適正な納税に協力してきたA子さんに対して延滞税や加算税についてまで連帯納付義務を課すのは常識的に考えて適切であるとは到底思えません。


なぜなら、延滞税・無申告加算税は、いずれも適正な申告をしなかったことに対する一種の制裁であって、本来の納税義務者Cさんに対して適正な申告を促すことを目的としているからです。そうであれば、相続税法34条4項のA子さんに対する連帯納付義務の規定は附帯税(延滞税・加算税)には及ばないと解すべきではないでしょうか。


その上、附帯税を連帯納付義務に含めると、本来の納税者(Cさん)に対する適切な徴収を放置し、そのツケを連帯納付義務者(A子さん)に負わせることになりかねません。このような理由で、そもそも附帯税は連帯納付義務の対象から除外されるべきなのです。でも現実は附帯税も連帯納付義務の対象とされる取扱いのようですから注意を要します。

「連帯納付義務」を免れるのは難しい

イ 連帯納付義務者と国税通則法66条1項の「正当な理由」について


無申告加算税についての国税通則法66条1項の正当な理由の有無については、連帯納付義務者であるA子さん自身について判断してもらえるのでしょうか。


<考え方の指針>


「無申告加算税」は、期限内に申告されなかったことについて「正当な理由」があると認められる場合には、課されないこととされています(国税通則法66条1項本文ただし書)。この場合は、「連帯納付義務者に正当な理由があるかどうかの判断をなし得るか」がポイントとなります。


本来の納税義務者に「正当な理由」が認められず、無申告加算税が賦課されるとしても、それとは別に連帯納付義務者自身において「正当な理由」があるか否かが判断され、もし正当な理由があれば無申告加算税分は連帯納付義務から除かれるべきではないでしょうか。


<本件でどう考えるべきか>


本件では、A子さんはCさんが申告・納税しないことを危惧し、積極的に税務署に情報を提供し、適正な課税を促してきました。また、和解によって1億5000万円支払うことが決まった時にも、もしCさんが申告・納税をしていない場合には、それを未払分に充てるつもりで、わざわざ税理士さんに税務署に確認してもらいました。

 

このようにA子さんは連帯納付義務者としてなし得る限りの協力をしてきました。このようなA子さんが無申告について責めを負う謂われはなく、「正当な理由がある」と判断されるべきでしょう。でも現実には、連帯納付義務者を対象に正当な理由の有無が判断されることは難しそうです。

新・税金裁判ものがたり

新・税金裁判ものがたり

関戸 一考,関戸 京子

メディアイランド

相続税、贈与税、青色申告、認知症、連帯納付義務…税金裁判の専門家が納税者目線で解きほぐす。 弁護士・税理士・税金裁判に興味のある納税者必読!豊富な具体例を題材に、税金裁判の現状と課題を解説します。

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