共有者の一人が居住する共有不動産に関する紛争

今回は、共有不動産に関する紛争の典型事例として、共有者の一人が居住する共有不動産に関する紛争について見ていきます。※本連載では、弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士・三平聡史氏の著書『共有不動産の紛争解決の実務』(民事法研究会)の中から一部を抜粋し、共有不動産に関する紛争の基本的な考え方と典型事例を見ていきます。

共有者間で紛争が具体化する典型的なケースとは?

まず、共有不動産に関する紛争の典型事例として、①共有者の人が居住する共有不動産に関する紛争、②経費分担・収入分配・管理方法などをめぐる共有の収益不動産に関する紛争、③使われていない共有不動産に関する紛争を紹介します。

 

ここでは、それぞれの紛争の背景や法律問題の概観にとどめて、判例の詳しい解釈論、手続の進め方、実務上の留意点などについては、第2章以下(※書籍参照)で解説することとします。

 

共有者の人が居住する共有不動産に関する紛争

 

⑴紛争の背景と事例の紹介

 

共有不動産に、共有者のうち1人が居住するというケースはよくあります。たとえば、共有者の1人とその一家の住居となっている、また、父と人の子が同居していたが、父の死後に子の人が家を出て別居になるケースもあります。これらのケースでは、共有者の間で明渡請求や金銭請求として紛争が具体化することが多いです。

 

このようなケースには、特徴的な経緯や背景があります。このような事情の把握は、紛争解決の方法の検討・判断において有益です。

 

典型事例1 共有者の人が居住する共有不動産

以前、父と長男A、その家族が、父が所有する不動産に同居しており、次男Bは別の場所に住んでいた。その後、父が亡くなり、その不動産は法律的にはA・Bの共有となった。共有不動産に関して、Bは不公平感を抱いている。

 

⑵明渡請求・金銭請求による紛争解決

 

このようなケースにおいては、法律上、共有者は各自が共有不動産を使用できますが、A(占有する共有者)が全面的に共有不動産を使用している一方、B(占有していない共有者)は使用していないため、この点で共有者間において不公平が発生しています。共有者間で賃料に相当する金銭の支払いを行っていないことはとても多いのです。一方、固定資産税やメンテナンスの費用は、居住する共有者が負担しています。

 

共有者の間の関係が良好であるときは何も問題はありません。しかし、関係が悪化すると、共有者の一部が権利を主張をして紛争が具体化することがあります。

 

基本的な紛争解決の方法としては、BからAに対する①明渡請求、②家賃分の金銭請求が考えられます。①については、BがAに対して不動産の明渡しを請求することは、原則的には認められません。一方、②については、BがAに使用の対価(たとえば、家賃相当の金額×Bの共有持分割合)を請求することが原則的に認められます。ただし、例外的に、一定期間は金銭の請求が認められないこともありますので注意が必要です。

意見が対立しやすい「共有持分の評価額」

⑶共有関係の解消による紛争解決

 

共有者の1人が不動産を占有するケースの根本的で理想的な紛争解決の方法は、共有持分を買い取らせる(買い取る)ことによって、共有関係を解消することです。つまり、紛争解決の方向性としては、このケースでは、AがBの共有持分を買い取ることで、不動産はAの単独所有となり、その後は紛争が発生しなくなる(合理的・理想的な状態となる)ということです。これ自体は単純なことですが、実際に対立している状況では、その共有持分の評価額(買取金額)について、AとBとで意見が対立し、なかなか合意には達しないことが多いです。

 

共有持分を買い取らせる方法──Bの立場から

 

Bの立場における理想的な紛争解決の方法は、Aに共有持分を買い取らせるということになります。任意の交渉で合意に達すればよいのですが、前述のとおり、共有者間の関係が良好でない場合には、共有持分の評価額について意見が対立して合意に達しないことが多いです。

 

まず、法律上は、Bが自己の共有持分をAに強制的に買い取らせる方法(AがBの共有持分を買い取る義務)はありません。現実的な紛争解決の方法としては、BがAに対して共有物分割請求を行い、協議で合意に達しない場合には提訴します。この場合、Aが全面的価格賠償(AがB共有持分を買い取るという方法)を要求する可能性が高いです。また、換価分割(第三者に競売により売却して代金を分ける方法)になる可能性もあります。ただし、いずれも、住宅ローンなどの担保があると、その判断が複雑になりますので注意が必要です。

 

共有持分を買い取る方法──Aの立場から

 

Aとしては、Bから介入されずに居住を継続したいというのが基本的な発想でしょう。Aの単独所有になればこれが実現します。つまり、Aの立場における理想的な紛争解決の方法は、Bから共有持分を買い取ることです。しかし、実際には、共有持分の評価額について意見が対立し、合意に達しないことが多いです。

 

まず、法律上は、AがBの共有持分を強制的に取得する方法はありません。現実的な紛争解決の方法としては、AはBに対して共有物分割請求を行い、協議で合意に達しない場合には提訴します。この場合、Aは全面的価格賠償(AがB持分を買い取るという方法)を要求します。「Aが長年居住していること」は重視されるので、全面的価格賠償が実現する可能性は高いでしょう。ただし、住宅ローンなどの担保があると、賠償金の算定が複雑になりますので注意が必要です。

 

⑷紛争解決のポイント

 

以上のとおり、共有者の1人が居住する共有不動産に関する紛争の特徴と、A・Bの2つの立場からの紛争解決の方法を概観しました。ここでは、いずれについても紛争解決を実現するために共通するポイントを整理しておきます。

 

<共有者の人が居住する共有不動産の紛争解決のポイント>

 

①紛争の特徴

共有者の人が居住する共有不動産については、共有持分の評価額(買取金額)について意見が対立することが多い。

 

②紛争解決のポイント

共有物分割の協議・訴訟によって解決する。協議・訴訟のそれぞれの段階で適切な対応をすることが、有利な結果を勝ち取ることにつながる。

 

③適切な対応

㋐協議

より合理的・客観的な評価額を取得する(例:不動産鑑定士に鑑定を依頼する)。

 

㋑訴訟

共有物分割訴訟を提起し、適切な評価額を主張する。「分割類型の希望」について適切なタイミングと内容で主張する。

本連載は、2017年2月刊行の書籍『共有不動産の紛争解決の実務』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「共有不動産」に関する紛争解決~基本的な考え方と典型事例

弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所 代表弁護士

昭和48年埼玉県大宮市生まれ、平成8年早稲田大学理工学部資源工学科卒業、平成10年司法書士試験合格、司法書士登録(埼玉司法書士会、現在は東京司法書士会)、平成12年司法試験合格、平成14年弁護士登録(第一東京弁護士会)、朝日中央綜合法律事務所入所、平成19年弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所開設。

著者紹介

共有不動産の紛争解決の実務

共有不動産の紛争解決の実務

三平 聡史

民事法研究会

共有不動産の管理、他の共有者や第三者に対する明渡請求・金銭請求、共有関係解消のための共有物分割・共有持分買取り・共有持分放棄などを事例に即して詳解!実務で使用する通知書・合意書・訴状などの書式、知っておくべき判…

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