誰も使っていない共有不動産で「紛争」が発生する要因とは?

今回は、誰も使っていない共有不動産で「紛争」が発生する要因について見ていきます。※本連載では、弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士・三平聡史氏の著書『共有不動産の紛争解決の実務』(民事法研究会)の中から一部を抜粋し、共有不動産に関する紛争の基本的な考え方と典型事例を見ていきます。

所有するだけで発生する法的リスクや経済的コスト

⑴紛争の背景と事例の紹介

 

共有の不動産を誰も使わないという状況から紛争に至るケースがあります。

 

このようなケースにおいても、紛争発生の背景を理解・把握することが、紛争解決の方法の検討・判断において役立ちます。

 

まず、基本的な要因として、①共有者の間で、不動産の活用・売却について意見が合わず、賃貸借・売却などができない、②共有者が特定できない(たとえば、共有不動産について相続が繰り返されていて、各相続について遺言・遺産分割の有無がわからない、現在の所有者(共有者)を正確に把握できない、そもそも共有者による意思決定自体ができない※3)、③不動産を売却することについては共有者の意見が一致しているが、売却金額について共有者間で意見の違いが生じているといったものがあげられます。また、④不動産を売却して金銭を分配することになったが、不動産によくない状況があり買い手が付かない(売却できるとしても、極端に安い金額となってしまう※4)、⑤自治体への寄附をすることで共有者全員が納得したが、自治体が認めない(通路以外は、寄附採納承認申請が通らないことが多い)といったこともあります。

 

共有不動産を共有者の誰も使わない場合、使わないこと自体は直接問題にはなりません。しかし、不動産は所有するだけで法的リスクや経済的コストを負います。これは共有とは関係なく、一般的な不動産の所有全般についていえることです。共有不動産を共有者の誰も使わないケースでは、法的リスクや経済的コストが発生し続けるわけですから、共有者間でそれらの負担や分担について意見の違いが生じて紛争化するという構造があります。

 

※3 共有不動産の使用方法の協議は、理論的には登記上の共有者だけで行うことができます。しかし現実的なリスクは残ります。

※4 共有不動産だけではなく不動産の売却一般についてあてはまることですが、具体的には、(ア)境界確定がされていない、(イ)建築確認がとれず、再築(建築)不可の状態である(接道条件がクリアされていないなど)、(ウ)通行権が確保されていない、(エ)農地となっている(農地の所有権移転登記では農業委員会または知事の許可書が必要)のような要因が考えられます。

使い勝手がよくない共有不動産は共有関係を解消する

【典型事例】

使われていない共有不動産のコストの分担

A・Bの共有である不動産の活用方法について、A・Bは意見が合わず、共有不動産は空き地・空き家となっていた。しかし、発生し続ける法的リスクや経済的コストの分担について、A・B間に紛争が発生した。

 

不動産に関する経済的コストには、①固定資産税、都市計画税(税金は共有者間に連帯納付責任があります。国税通則法9条、地方税法10条の2)、②樹木などの切除、建物修繕・解体のコストがあります。また、法的リスクとしては、空き家の老朽化により第三者に発生した被害の賠償(たとえば、倒壊、落下物、火災の発生、延焼)などが考えられます。

 

⑵共有関係の解消による紛争解決の方法

 

使い勝手がよくない共有不動産に関する根本的な紛争解決の方法は、共有関係を解消することです。具体的には、①共有物分割請求、②共有持分放棄です。①は共有を解消するための協議や訴訟手続ですが、このようなケースでは、換価分割となり競売をすることになる可能性が高いです。ただし、競売では入札者が現れない可能性があり、そうなると結局解決できないことになります。また、②は当事者の意思表示だけで実現しますが、放棄した者の共有持分を他の共有者に押し付ける状態になるため、他の共有者が登記申請に協力しないことが多いです。そのため、登記引取請求をすることもよくあります。

 

なお、一般的な共有関係からの離脱方法には、前記①②のほかに、③共有持分譲渡があります。しかし、このようなケースでは、活用できていない不動産の共有持分を欲しがる人は通常いません。譲り受ける、つまり買ってくれる人はいないでしょう。

 

⑶使われていない共有不動産の活用方法の徹底による紛争解決の方法

 

また、共有関係を解消しないとしても、活用方法の検討を徹底し、不動産の有効活用について徹底的に考察する方法があります。収益を生む方法(たとえば、太陽光発電用地として賃貸するなど)があれば、売却・賃貸の実現につながるからです。

 

⑷紛争解決のポイント

 

以上のとおり、使われていない共有不動産に関する紛争の特徴と、紛争解決の方法を概観しました。前述のように紛争解決の方法はいくつかありますが、実務においては、個別的な事情をしっかり把握して、最適な紛争解決の方法を判断・選択すべきです。

 

<共有の収益不動産の紛争解決のポイント>

①紛争の特徴

不動産所有に伴う法的リスクや経済的コストの負担や分担について意見の違いが生じて紛争化する。

 

②紛争解決のポイント

可能な限り多くの紛争解決の方法の選択肢をあげる。それぞれの方法についての実効性を判断し、最も効率的な方法を選択する。

 

③必要な検討事項

㋐不動産の活用

不動産を活用することができるか、できないか。活用できない理由は何か。

 

㋑共有状態の解消や離脱

共有者間での協議が可能か。共有物分割訴訟の提起は実効的か。共有持分放棄による共有離脱は実効的か。

本連載は、2017年2月刊行の書籍『共有不動産の紛争解決の実務』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「共有不動産」に関する紛争解決~基本的な考え方と典型事例

弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所 代表弁護士

昭和48年埼玉県大宮市生まれ、平成8年早稲田大学理工学部資源工学科卒業、平成10年司法書士試験合格、司法書士登録(埼玉司法書士会、現在は東京司法書士会)、平成12年司法試験合格、平成14年弁護士登録(第一東京弁護士会)、朝日中央綜合法律事務所入所、平成19年弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所開設。

著者紹介

共有不動産の紛争解決の実務

共有不動産の紛争解決の実務

三平 聡史

民事法研究会

共有不動産の管理、他の共有者や第三者に対する明渡請求・金銭請求、共有関係解消のための共有物分割・共有持分買取り・共有持分放棄などを事例に即して詳解!実務で使用する通知書・合意書・訴状などの書式、知っておくべき判…

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