今回は、空き家の購入を検討する際、建築物の法定耐用年数をどう考えるかを見ていきます。※本連載は、株式会社マエダハウジング、株式会社マエダハウジング不動産の代表取締役・前田政登己氏の著書、『「困った空き家」を「生きた資産」に変える20の方法』(株式会社ザメディアジョン)より一部を抜粋し、空き家の具体的な活用法を紹介します。

築30年を超えるとマンションの空室率は高まる

現在、空き家問題の対象は戸建てが中心ですが、いずれは老朽化した分譲マンションでも空き家問題が深刻化していくでしょう。2013年末時点で全国のマンションストックは601万戸。全体の空室率は2.5%。このうち1981年6月以前に建設された旧耐震マンションは106万戸で、1979年以前に完成したマンションでは空室戸数の割合が10〜15%。1969年以前となると20%超。つまり、築30年を超えるとマンションの空室率は高まっていきます。

 

それでは、建て替えればよいのか、というと、ここにも限界があります。容積率に余裕があり、以前より多くの部屋を造ることができて、その売却益が見込める場合はデベロッパーの協力を得て建て替えることができます。実際に建て替えができたのは、全国でも200件程度にしかすぎません。建築基準法がだんだん厳しくなり、容積率や建ぺい率は昔に比べて小さくなっています。そのため、10階建てのマンションを15階建てにして、増えた部屋の売却益を建て替え費用に充てるといったことが難しくなってきています。

 

区分所有法によれば、所有者全体の5分の4が賛成すればマンションの建て替え決議は可能で、反対する人の権利を買い取ることもできます。しかし、買い取り価格をつり上げられたり、建て替え費用が捻出できない人がいたり、「ここで一生を終えるから建て替えなくてもいい」という高齢者がいるなどして、なかなかマンションの建て替えはうまく進まないのが現状です。

 

また、老朽化マンションには既存不適格物件も多くあります。これは、建設当時は適法だったものの、法改正によって違法となり、同じ容積率で建て替えができなくなった物件のことです。1970年以前の建設で67%がこれにあたり、既存不適格物件マンションの建て替えも極めて困難といえるでしょう。

法定耐用年数を過ぎていても空き家の再生は十分可能

空き家購入を検討する際、「この家、何年持つのかな?」と考えるのは当然のことです。そこで一つの目安になるのが「住宅の法定耐用年数」です。居住用住宅の場合、木造だと33年、鉄骨鉄筋コンクリート造だと70年となっています。一方、事業用(賃貸用)の場合、マンションなど鉄骨鉄筋コンクリート造だと47年、木造だと22年です。

 

しかし、これは納税時に、それぞれの耐用年数に基づく減価償却率によって毎年の経費算入額を求めるためのものであり、この年数を超えれば建物がもたないということではありません。

 

その証拠に、1998年の改正で鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数が60年から47年に短縮されましたが、これは耐久性が落ちたからではありません。減税につなげるための税制上の措置に過ぎないものです。

 

私たちが手がけるリノベーション物件は、購入した空き家や親から引き継いだ家などいろいろですが、築40年、60年、80年、時には100年超など、法定耐用年数をとっくに超えた家も珍しくありません。見た目はボロボロでも、ホームインスペクション(住宅診断)を行いリノベーションで再生できることを広く知っていただければと思います。

 

築約100 年。祖父母が暮らしていた家をリノベーションしたF 様邸
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