前回は、工場の売却における、土壌汚染トラブルを回避するための留意点について取り上げました。今回は、「瑕疵担保責任」を問われるケースについて見ていきます。

埋蔵文化財も「隠れた瑕疵」に該当

不動産を売却する際に締結する売却契約書には、売主が負う「瑕疵担保責任」について定めた条項が必ず盛り込まれています。一般的な調査ではわからない「隠れた瑕疵」が売却後に見つかった場合、買主はこの条項により損害賠償請求や売却契約の破棄を求めることが可能です。

 

「隠れた瑕疵」に該当するのは廃棄埋設物や土壌汚染、埋蔵文化財などです。廃棄埋設物や土壌汚染がある土地は問題なく利用できるよう撤去や浄化の工事を行うために多額の費用を要します。

 

埋蔵文化財は住居や施設跡などの遺構や石器、土器などの遺物を指します。開発造成する過程で地中から発見されると現地調査や発掘作業により工事を中断しなければなりません。また、発掘費用などを土地の所有者が負うことになるため、購入後に判明した場合には買主にとって大きな負担となります。

「隠れた瑕疵」の責任範囲は、ケースバイケースで判断

ただし、買主が不動産取引のプロである宅地建物取引業者であった場合には、購入した側にも一定の責任があると考えられるため、売主が対応を求められる範囲は軽減されます。

 

たとえば「解体前提で古い工場がある不動産を宅建事業者が購入したところ、基礎杭が思いのほか深く埋設されており、解体費用が想定の2倍以上に膨らんだ」というケースでは、買主側もプロとしての調査義務を100%果たしたとは言えないと判断されることがあるのです。

 

このように、「隠れた瑕疵」は売ばあ買契約に定めがあっても責任の範囲はケースバイケースで判断されるため、買主にとっては大きな心配事の一つです。そのため買主の立場から見ると、売主により撤去や造成がなされている「更地」と、廃棄物や建物などが残っている「現況渡し」ではリスクが大きく異なってきます。リスクは購入希望価格に反映されるため、「現況渡し」の場合、物件によってはかなり買い叩かれることがあります。

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    本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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