前回は、廃業の告知を行う際、特に配慮をすべき点について説明しました。今回は、賃貸住宅の売却をする際の、トラブルを回避する秘訣を見ていきます。

買主や物件の特性に合わせた戦略を考える

アパートなどの賃貸住宅における出口戦略には次の三つの選択肢があります。

 

①収益物件としてそのまま売却し、買主も賃貸業を営む

②現況渡しで売却後、買主が更地にする

③売主が更地にして売却する

 

いずれを選ぶかで売却価格が大きく異なるため、買主や物件の特性に合わせた戦略を考えることが重要です。

 

収益物件として売却する場合には収益性を検証し、近隣にある同等の物件と比較してみる必要があります。構造によって耐用年数に違いがあり、ローンの利用しやすさが違ってきます。たとえば鉄筋コンクリート構造の物件なら耐用年数は47年です。築20年でも残存年数が27年あるため、買主は27年という比較的長いローンを組むことができます。

 

鉄骨造であれば耐用年数は34年、木造は22年なので、築20年の物件なら残存年数はそれぞれ14年と2年になります。ローンの長さも同様となるので、買主にとっては買いにくい物件であり、必然的に価格が下がってしまうのです。

 

老朽化や入居率の低下などが顕著で収益物件としての魅力が小さい物件の場合には、買主側も購入後更地にして再利用することを考えます。その需要を汲み取って売主自身が更地にしてしまえば売却価格を大きく高騰させることができます。

 

ただし、更地にするには入居者対策と解体工事が必要であり、コストや手間がかかるので居抜きで売却する方が大きな利益を確保できる場合もあります。どのような方法を選ぶかは、物件の特性や状況をよく検証して決めることが大切です。

借地人との「明け渡し交渉」は専門家へ依頼

経営者の中には節税や相続対策として賃貸物件を持っている人が少なくありません。また、借地として貸し出した土地の上に借地人が家を建てて住んでいるケースもあります。

 

古い契約では賃借の期間が定められていないため、土地を売却する場合にはデリケートな明け渡し交渉が必要となる場合があります。特に古い契約を結んでいる入居者は大半が高齢者なので住む場所の問題は深刻です。基本的には引っ越し資金を負担して明け渡してもらうことになりますが、交渉がこじれると感情的な問題に発展する恐れがあります。

 

大家として個人的な付き合いがあるなら、誠意を持って話し合いをしてみるのも一つの手段です。それが難しい場合には弁護士などの専門家を立てて感情的にならないよう対応してもらいます。

 

借地の場合には、底地権だけで売却するか借地権を買い取った上で売却するかという二つの選択肢があります。借地権を買い取って売却するのが理想ですが、それが難しい場合には底地権だけを売却する手段も検討すべきでしょう。

 

買手との交渉で「退居や借地権の取得ができない場合には違約金の支払いなしに購入をやめられる」という特約をつけるのも有効です。買主のリスクが軽減されるため、買手がつきやすくなります。

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    本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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