国民年金の保険料納付が困難な場合、一定の条件を満たせば全額または一部の免除を受けることができます。また、免除された期間の保険料は10年以内であれば「追納」して将来の年金額を増やすことが可能です。しかし、免除期間の制度上の仕組みを知らずに追納すると、「支払った保険料に対して年金がほとんど増えない」という事態に陥ることもあります。本記事では、過去56ヵ月分の免除期間を持つ52歳男性の事例をもとに、特定社会保険労務士・CFPの五十嵐義典氏が追納による年金増加額の正しい計算方法を解説します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「年金10万円増えるはずでは…?」52歳自営業の誤算。年金事務所で突きつけられた〈追納90万円で年金5万円増〉の現実【社労士FPが「国民年金の追納」を解説】
【社労士FPが解説】全額免除でも半分反映される…「国庫負担」の仕組み
老齢基礎年金の満額は84万7,300円(※1956年4月2日以降生まれの場合)であり、40年(480ヵ月)の保険料納付済期間があれば満額となります。つまり、1ヵ月の納付につき1,765円程度(84万7,300円÷480ヵ月)増える計算です。
しかし、第1号被保険者が国民年金保険料の免除を受けた場合、保険料を払っていなくても、国庫負担分が老齢基礎年金の額に反映される仕組みになっています。
月額の国民年金保険料を納めていた月は保険料負担分と国庫負担分を合わせて100%で計算されますが、全額免除を受けた期間も、国庫負担として2分の1(50%)が反映されるのです(※2009年3月以前の期間についての国庫負担割合は3分の1)。
アキヨシさんがこのまま60歳になるまで国民年金保険料を納付し続けた場合、保険料納付済期間は会社員時代の第2号被保険者期間(※20歳以上60歳未満の期間に限定)を含めて合計424ヵ月となります。一方、全額免除を受けた56ヵ月分については、すでに国庫負担の2分の1が反映されています。
そのため、老齢基礎年金は「84万7,300円×(424ヵ月+56ヵ月×1/2)/480ヵ月=79万7,874円」と見込まれるのです。
「90万円払って5万円しか増えない」…年金事務所で突きつけられた現実
つまり、すでに2分の1(国庫負担分)が反映されている56ヵ月分の全額免除期間を追納したとしても、新たに反映されるのは残りの2分の1(保険料負担分)だけとなります。追納の結果、老齢基礎年金は満額の84万7,300円になるものの、実際に増える額は4万9,426円(84万7,300円-79万7,874円)にとどまります。
1ヵ月あたりの納付で増える老齢基礎年金は、1,765円の半分の約883円(4万9,426円÷56ヵ月)になり、満額の84万7,300円を超えて増えることはありません。
過去56ヵ月分の保険料を追納する場合、当時の保険料額に加算額も上乗せされることもあり、その結果、合計で90万円以上かかる見込みですが、それによって増える老齢基礎年金は年間5万円弱にしかならないのです。