遺族の生活を支える「遺族年金」ですが、現行制度において高所得の遺族は受給要件を満たさず、子どもへの遺族基礎年金も「支給停止」となってしまうケースが存在します。しかし、2028年4月に予定されている法改正により、子どもへの支給要件が見直され、受給額が大幅に増える見込みです。世帯年収2,000万円・子ども3人を育てる40代夫婦の事例をもとに、遺族年金制度の改正ポイントと注意点を、特定社会保険労務士・CFPの五十嵐義典氏が試算を交えて解説します。
〈世帯年収2,000万円〉3人の子を育てる44歳妻、夫の急逝で「遺族基礎年金ゼロ」に落胆も…「え、そんなにもらえるんですか?」受給見込み額が“激変”するワケ【社労士FPが解説】
世帯年収2,000万円の5人家族…「夫の急逝」で平穏な暮らしが一変
トシユキさん(仮名・49歳)と妻のミキさん(仮名・44歳)夫婦は共働きで、ともに大学を卒業後、22歳から勤務を続けています。二人には中学2年生の長男・リョウタさん(仮名)、小学6年生の次男・シュンさん(仮名)、小学3年生の長女・レナさん(仮名)という3人の子どもがおり、5人家族です。
3人分の教育費こそかかるものの、世帯収入は2,000万円あり、収入面での不安は特にありませんでした。
しかし、そんな家庭の平穏を揺るがす事態が起こります。夫のトシユキさんが病気で急逝してしまったのです。
トシユキさんを失った悲しみもさることながら、トシユキさんの給与収入がゼロになることで世帯収入は激減。ミキさんは、家計を立て直すために「遺族年金」が支給されるかどうか、年金事務所で確認することにしました。
収入・所得が高く、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」ともに受給権がない44歳妻
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。遺族基礎年金は定額で支給される一方、遺族厚生年金は亡くなった方が会社員等だった場合に、厚生年金加入記録をもとに、原則、その報酬比例部分の4分の3相当が支給されます。
ただし、これらの遺族年金を受給するには、遺族側が一定の収入要件を満たしている必要があります。具体的には、遺族の収入が年間850万円未満、あるいは所得が年間655.5万円未満であることが条件です。
ミキさんの場合、収入・所得ともにこの基準額を超えており、今後も下がる見込みはありません。そのため、配偶者であるミキさんには、遺族基礎年金・遺族厚生年金いずれも受給権がありません。
3人の子には「遺族厚生年金」はあるものの、「遺族基礎年金」は支給されず
他方、亡くなった方の子も、遺族基礎年金や遺族厚生年金の受給対象です。
ここでの「子」とは、未婚で18歳到達の年度末を迎えていない子※、つまり高校を卒業するまでの子を指します。リョウタさん、シュンさん、レナさんはこの条件を満たし、収入もないため、3人には遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権が発生します。
※ 一定の障害がある場合は20歳未満の子。
遺族厚生年金は、トシユキさんの厚生年金加入記録から計算すると年間75万円となり、こちらはそのまま受給できます。受給権者が3人いるため、1人あたりの受給額は3で割った25万円です。
しかし、遺族基礎年金については現行制度上、受給権のある子がその父または母と生計を同じくしている場合、支給停止になってしまいます。
子が遺族基礎年金を受給する場合、3人分の年額は「基本額84万7,300円+子の加算32万5,100円(24万3,800円+8万1,300円)=117万2,400円」となりますが、子どもたちが母・ミキさんと同居し、生計が同じであることから、3人の遺族基礎年金は支給停止となります。
つまり、現行制度上、遺族基礎年金は誰にも支給されないのです。
