通勤ラッシュの満員電車で、身に覚えのない痴漢行為を指摘された場合、あなたならどうするでしょうか。無実を主張して争うのか、それとも否認を維持しながら早期解決に向けて示談を模索するのか。本記事では、思わぬ冤罪トラブルに直面した42歳男性の事例をもとに、山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が、身柄拘束や家庭崩壊を防ぐための適切な初期対応を解説します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「痴漢なんてするわけない…」朝の通勤ラッシュ、満員電車で起きた悲劇。無実を訴える年収660万円・42歳会社員、家族と仕事を守るための〈苦渋の決断〉【弁護士が解説】
年収660万円・42歳会社員を襲った悲劇…満員電車で突然「痴漢」の疑い
タクミさん(仮名・42歳)は都内の中堅メーカーに勤めており、年収は約660万円。タクミさんには、専業主婦の妻と中学生の息子がおり、郊外に購入した戸建ての住宅ローンもまだ長く残っています。
いつも通り、満員電車に揺られて通勤していたある日のこと。電車が急ブレーキで大きく揺れた瞬間、タクミさんの手が前方に立っていた女性のバッグに触れてしまいました。
その直後、女性が鋭く振り返り、タクミさんの腕を掴んで痴漢行為を主張。揺れによる不可抗力であると説明してもまったく聞き入れられず、タクミさんは次の駅で降ろされ、駅員室を経由してそのまま管轄の警察署へと連行されてしまいました。
取調室に入れられたタクミさんは、当然ながら一貫して無実を主張し続けました。
しかし、警察官からは「被害者側が明確に被害を訴えている以上、このまま否認を続ければ証拠隠滅や逃亡の恐れがある」として、正式な逮捕・勾留の手続きに進むことを告げられます。
勤務先の会社にも事態が知れ渡り、痴漢の疑いで逮捕されたという事実が広まれば、妻や多感な時期の息子がどのような目に遭うか想像に難くありません。
最大20日間の勾留…会社と家族を失う恐怖のなか、当番弁護士へSOS
頭のなかが真っ白になったタクミさんは、逮捕後に一度だけ無料で呼ぶことができる当番弁護士に助けを求めました。
接見に訪れた弁護士は、まずタクミさんから当時の状況を詳しく聞き取りました。そして、身に覚えがないのであれば、安易に犯行を認めるべきではないこと、防犯カメラなどの客観的な証拠を確認しながら無実を主張していく方法があることを説明しました。
一方で、捜査や身柄拘束が続けば、仕事や家族生活に影響が生じる可能性があることも説明されました。そのうえで、刑事責任を認めることなく、被害を訴えている女性との間で早期解決のための示談を模索することも、選択肢の一つとして示されました。
もちろん、示談をすれば必ず釈放されたり、不起訴になったりするわけではありません。それでもタクミさんにとっては、無実を主張し続けながら長期的に争う場合の負担と、一定の金銭を支払って早期解決を図る場合の負担を比較せざるを得ない状況でした。