定年後の生活に備え、退職金や貯蓄を確保してきた人もいるでしょう。しかし、子どもの病気や離婚など、予想していなかった事情で、親が再び生活を支える立場になることもあります。娘と孫を助けたい一方、自分たちにも老後の生活がある――。支援がいつまで続くかわからなければ、仕事を辞める時期や老後資金の使い方も見直さざるを得ません。ある夫婦の事例から、その現実を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「先行きがあまりに真っ暗です…」〈月収25万円〉〈退職金2,000万円〉64歳男性、老後は安泰のはずが…原因は38歳娘と10歳孫の「出戻り」 ※写真はイメージです/PIXTA

65歳で退職するはずが…娘と孫の出戻り

60歳でメーカーを定年退職した後も再雇用で働いている高橋修さん(64歳・仮名)。現在の月収は25万円、退職時には2,000万円ほどの退職金を受け取り、貯蓄は計3,000万円。住宅ローンは完済しています。65歳で仕事を辞めたあとは、年金と貯蓄を取り崩しながら暮らすつもりでした。

 

ところが、その計画が変わる出来事が起きます。38歳の娘が、10歳の息子を連れて実家に戻ってきたのです。

 

娘は離婚後、仕事をしながら子育てを続けていました。しかし、持病が悪化し、働き続けることが難しくなりました。障害年金を受給し、児童手当なども受けています。

 

障害年金が年額60万円強。10歳の子どもに対する児童手当は年額12万円。そのほかに一定の公的支援もありますが、住居費や日々の生活費を賄いながら子どもを育てるには、厳しい金額でした。

 

「娘は好きで働けなくなったわけではないし、離婚してひとりで頑張ってきました。親が助けてあげないと……」

 

高橋さん夫婦は、娘と孫との同居を始めます。食費や光熱費は増え、孫の学校関係の出費も家計に加わります。娘から生活費を十分に受け取れる状況ではなく、親世帯が負担する分も少なくありません。

 

文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』によると、公立小学校に通う子ども1人当たりの年間学習費総額は、約33万6,000円です。その内訳は、学校教育費と給食費を合わせて年12万円、残りは塾や習い事などの学校外活動費です。子どもの成長に伴って必要な費用は増えていく――高橋さんはそう考えています。