医学部の面接試験は本当に厳しい? 高まる重要性と対策
2021年度から本格的に進められた大学入試改革によって、一般選抜でも「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価することが求められるようになりました。さらに最近の医学部入試では、医師や医学研究者としての適性の評価にウエイトを置くようになっているため、面接の結果はかなり重視されています。
点数化する大学と点数化しない大学がありますが、点数化しない大学では合否判定の資料として重視しており、点数化の有無にかかわらず、募集要項などに「面接の評価が著しく低い場合は、学力検査の結果に関係なく不合格とする」と記載している大学も多くあります。特に国公立大では、ほとんどの大学が募集要項に同様の記述や「面接の評価が一定水準以上の者を合格とする」などと、明記しています。
下記の表は2026年度入試における面接・適性試験を含めた国公立大医学部の個別学力試験(2次試験)の配点について、いくつかの大学をピックアップしたものです。
一般選抜においても学科試験より面接試験の配点が高くなっている大学が増えています。例えば、筑波大学では学科試験については、英語、数学、理科がそれぞれ300点であるのに対し、適性検査も含めた人物評価が500点の配点となり、配点比率がかなり高くなっています。
また京都大学は、入学者選抜要項に下記の内容を記載しています。京都大学はかつて、面接を50点満点で点数化していました。当時は、センター試験と個別試験を合わせて1,300点満点のうちの50点でしたから、面接の点数が低くても学科試験の点数が高ければ合格できる可能性がありました。しかし近年では面接の点数化をやめ、面接の結果のみで不合格にできるようになりました。
面接では人の命を預かる医師としての適性、コミュニケーション能力などを幅広くチェックされ、患者さんから信頼される医師にはなれないと判断された受験生は、どんなに学科試験の結果が良くても合格することはできません。
学校推薦型選抜や総合型選抜では、特に面接試験が重視されており、長い時間をかけて行う場合もあります。ある国立大の学校推薦型選抜では、数時間にわたるワークショップが課せられたこともあります。
例えば「大学病院を改善する」というテーマでは、まず問題点をディスカッションさせ、付せんに書き出して整理して発表し、どう改善するのかをまとめます。面接担当者は、この流れの中で受験生の医療に対する関心度や、リーダーシップ、さらにコミュニケーション能力などを見ているわけです。
面接試験では何を見ているの?
医学部での面接試験は大学ごとに多様で、中には医学部とはまったく関係ないようなテーマについて考えさせたり、質問が飛んできたりすることがあります。しかし、こういった面接試験の質問を面接対策のプロ講師に評価してもらうと、「医学部の面接試験として適切なものですね」という回答がよく返ってきます。
受験生と面接の話をしていると、「こういう質問をされたらどう答えたら良いですか?」などと模範解答を尋ねられることもよくあります。しかし、模範的な解答を準備して答えたとしても、そこで面接は終わりません。自分が答えた内容についてさらに掘り下げた内容の質問が続きます。ですから、表面的な対策・準備だけでは今の面接試験は太刀打ちできません。面接試験の本質「面接試験で何を見ようとしているのか?」を十分理解していないと、正しい準備はできないでしょう。
では、面接試験では(小論文試験も含めてですが)何を見ているのでしょうか。
それは、 「医療現場に立つ『自覚』と『資質』」です。
医学部入試は医師・研究者としての就職試験の一面もあります。医学部に合格したら将来はほぼ医師、または研究者になるからです。医学部の受験会場に来ているということは、「将来、医療現場に立つ」という覚悟ができている状態になっているはずです。「患者さんがいる医療現場」のイメージをしっかり持っていなくてはいけません。
また、医師や研究者を目指すための資質として何が必要なのか、については、各大学が公表しているアドミッション・ポリシー(入学者の受入方針)に明記されています。志望大学のアドミッション・ポリシーは手元に置き、いつでも見られるようにして、医師・研究者としての資質を常に意識してほしいと思います。
患者さんは病気やケガなどで体の調子が悪く、つらい状態です。そのうえ、医学・医療の知識がないため、その原因やこの先どうなるのかなど、まったくわかりません。精神的にとても不安になっている患者さんもいます。それゆえ、医学・医療のプロである医師に「相談したい」と思って、患者さんは医師の元に訪れるのです。
良い医療現場にするためには、患者さんと医師の間に「信頼関係」が必須です。患者さんは自分の健康、ひいては自分の命を医師に預けることになります。自分の命を信頼できない人に預けることは、誰しも怖いことです。ですから、患者さんの健康と命を預かる医師は、患者さんとの間に信頼関係を構築できるようなコミュニケーションが必要になります。
面接試験の受け答えのカギとなる現代医療についての大事な考え方のポイントは、
ということになります。
繰り返しになりますが、医療で扱う「健康」「いのち」は患者さんのものですから、患者さんが医療の主体であり、患者さんには基本的人権としての自己決定権があり、医師はそれを尊重しなくてはならない立場なのです。医学部を目指す受験生であれば、この基本的な考えは必ず持っていてほしいものです。
また、現代では昔に比べ「いのち」を永らえるすべが発達してきました。しかし、それは同時に健康ではない状態で長く生きる人々を医師は診続けることにもなります。
こういった患者さんと「医師―患者」の関係を長く続けることが、超高齢社会の日本では特に大きな意味を持ってくることになります。 「いのち」の終わり、「いのち」の質、「いのち」の優先順位など、医療現場では「いのち」について重い決断をすることも多くなります。受験生である今から、重く、深く考える必要はありませんが、「将来、医療現場で命を預かる自覚」をしっかり持っておいてほしいと思います。
では、実際の面接では、どのような受験生が評価され、どのような受験生が評価されにくいのでしょうか。同書の著者である可児氏に、受験生が陥りがちな失敗や、面接対策で押さえておきたいポイントについて聞きました。
面接で評価される受験生、評価されにくい受験生の違いとは?
──実際の指導を通じて、面接で評価される受験生と、評価されにくい受験生には、どのような特徴があると感じていますか?
可児:面接時間は10〜30分程度と時間が限られているため、第一印象が重要です。例えば、姿勢が悪い、相手の目を見られない、声が小さくて何を言っているかわからないといったことは、マイナスの評価につながる可能性があります。
勉強には一生懸命取り組んでいても、コミュニケーションが苦手な受験生はいます。メディカルラボでは、必要に応じてボイストレーナーをつけたり、姿勢や相手の目を見て話すことを指導したりしています。
──模範解答を準備するだけでは対応できないとのことですが、受験生が陥りがちな失敗はありますか?
可児:想定問答を1〜2往復しか準備していない受験生が多いですね。回答をさらに掘り下げられると、答えに詰まってしまいます。1つの質問に対して6〜7回とやり取りを重ねる練習が必要です。特に学力に自信がある受験生ほど、面接対策を甘く見てしまうことがあります。
メディカルラボには面接指導の専門講師がいますので、かなり踏み込んで質問します。「この質問ではこういうことを見ているから、その回答ではよくない」といったことも具体的に指摘します。
志望理由のNG回答…「きっかけ」と「決意」は違う
──志望理由でよく見られるNG回答や、説得力に欠ける書き方はありますか?
可児:「自分や家族が病気になったときに医師にお世話になった」「身近に医療従事者がいた」といった理由はよく聞きます。ただ、それは医師に関心を持ったきっかけです。「自分も医師になろう」と決意するのは、また別の話です。自分の将来を決めることですから、きっかけから決意にどうつながったのか、その過程を説明できることが重要になります。
もちろん、高校生ですから、決意につながる明確なエピソードがない人もいます。そういう場合は、将来どのような医師になりたいのかを、どれだけ具体的に自分の言葉で説明できるかが大切です。
以前の面接では、高校時代の生活や部活動など、過去の経験を聞かれることが多かったと思います。しかし最近の質問を見ていると、大学入学後の生活や将来の医師像など、未来について問うものも増えています。ですから、過去のエピソードが十分になかったとしても、将来の姿を具体的に考えることが重要です。
また、大学の志望理由でも、「地域医療に力を入れている」「問題解決型学習を行っている」といった、ほかの大学にも当てはまる内容を書く受験生が多いですね。その大学ならではの特徴まで調べる必要があります。むしろ、調べていくうちに大学への関心が深まり、「やっぱりこの大学に入りたい」という気持ちが強くなることもあります。
メディカルラボでも、「それはほかの大学でもやっているよね」と問いかけながら、生徒自身に調べてもらいます。そうして志望理由を掘り下げていくことが、そのまま面接対策にもつながります。
面接対策を通じて、勉強への取り組み方が変わることも
──秋から面接対策を始める受験生は、何を優先して取り組めばよいでしょうか?
可児: まずは、自分がなぜ医師になりたいのか、どのような医師になりたいのかをしっかり考えることです。志望理由書を作成するときも、合格するために受けのいい答えを探すのではなく、できるだけ生徒自身の本音を引き出すようにしています。
自分がどのような医師になりたいのかを掘り下げて考えることで、医師になる自覚が芽生えてくるんです。そうすると、勉強への取り組み方まで変わることがあります。
例えば、浪人生の中には、親の期待が大きかったり、「家を継ぐのは自分しかいない」と考えていたりする子もいます。ただ、そうした受験生が、必ずしも自分自身の将来について深く考えられているとは限りません。医師になったら患者さんとどう関わりたいのかということよりも、「自分はこういう環境にいるから医学部を目指さなければならない」という気持ちが先に立っている場合もあります。
そういう子には、いったん親の期待や自分の置かれた立場を脇に置いて、「そもそも、なぜ医師になりたいのか」と考えてもらいます。
以前、浪人を重ね、いくつもの予備校を転々としてきた生徒がいました。メディカルラボに来た当初も、やる気があるのかないのか、よくわからないような状態でした。でも、面接指導をきっかけに、自分が医師を目指す理由を考えるようになり、勉強への向き合い方にも変化が見られたんです。
ですから、面接対策は単に受け答えを練習することではありません。志望理由を掘り下げ、自分の将来について考えることが、受験勉強に取り組む意欲にもつながります。志望理由をきちんと準備できている受験生は、面接演習でも質問に答えやすくなります。まずはそこをしっかり固めてほしいと思います。
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括
可児 良友

