配偶者が亡くなったとき、残された人は遺族年金をいくら受け取れるのでしょうか。「亡くなった夫の年金の4分の3をもらえる」と思っていても、実際の金額は年金の内訳や自身の受給状況などによって異なります。夫婦で暮らしていたときの年金額を基準に生活設計を立てていると、思わぬ誤算につながることも。ある夫婦の事例から、遺族年金についてよくある思い込みをみていきます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「そんな話、聞いてない!」 〈年金月24万円・70歳夫〉を亡くした〈68歳専業主婦〉、年金事務所で知った「遺族年金の思い込み」の代償 ※写真はイメージです/PIXTA

繰り下げで増えた年金は引き継がれない

窓口で説明を受けた恵子さんは、夫の年金額をそのまま基準にして、遺族年金を計算できるわけではないと知りました。

 

日本年金機構によると、老齢年金は受給開始を遅らせることで増額されます。原則として、1ヵ月繰り下げるごとに0.7%増額され、70歳まで繰り下げた場合の増額率は42%です。65歳時点で月17万円だった年金は、単純計算で月24万円程度になります。ただし、繰り下げによる増額分は、遺族厚生年金には反映されません。

 

「主人が年金を増やすために待っていたことは知っていました。でも、私が受け取る遺族年金まで同じように増えるわけではないんですね。そんな話、聞いていませんでした」

 

遺族厚生年金の基本額は、亡くなった人の老齢厚生年金のうち、報酬比例部分の4分の3です。老齢基礎年金も含めた年金総額の4分の3ではありません。また、妻自身が老齢厚生年金を受け取る場合には、所定の調整が行われます。

 

厚生労働省が公表する公的年金制度の解説でも、老齢年金と遺族年金は支給の仕組みが異なり、併せて受け取る場合には調整があることが説明されています。

 

「これからは、自分の年金で毎月いくら使えるのか、きちんと計算しないといけませんね」

 

生命保険文化センター『2025年度 生活保障に関する調査』によると、万一の際の不安として「遺族年金等の公的保障だけでは不十分」と答えた人は44.9%。また、夫婦2人の老後最低日常生活費は月額平均23.9万円となっています。

 

配偶者の死後は年金収入が大きく変動するため、繰り下げ増額が遺族厚生年金に反映されない仕組みを正しく把握し、万一の際の収入と支出の試算を行っておくことが重要です。