老後の生活では、年金収入や貯蓄を踏まえ、自分たちの楽しみと将来への備えのバランスを考えることが大切です。一方、子ども世代も住宅ローンや教育費などの負担を抱えています。親が自分たちのためにお金を使うことは、決して悪いことではありません。ただ、子どもや孫の暮らしを知ったとき、資産の使い道について考え直す人もいるようです。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「一度ハワイに行ってみたかった」〈退職金1,800万円〉〈年金17万円〉65歳夫婦、総額300万円の豪華旅行から帰国後、「息子のひと言」で我に返った理由 ※写真はイメージです/PIXTA

「海外に行ってみたかった…」 退職後に叶えた夫婦の夢

高橋浩さん(仮名・65歳)。今年、65歳を迎えて定年退職し、再雇用制度は利用せずに現役生活を終えました。現在は、同い年の妻・由美子さん(仮名)と暮らしています。

 

退職金約1,800万円に現役時代からの貯蓄を合わせ、夫婦の貯蓄は約2,500万円。年金は月17万円。妻の年金と合わせると月26万円です。贅沢ができるわけではありませんが、日々の生活を賄うには十分です。老後の見通しも立ったということで、浩さんは長年の夢だった海外旅行を計画します。

 

「新婚旅行は宮崎に行きました。私も妻も、生まれて一度もパスポートを持ったことがありません。人生、一度くらいは海外に行きたいと話していました」

 

行き先に決めたのはハワイ。息子夫婦から「ハワイであれば日本語も結構通じるから」と勧められたことも理由の一つでした。

 

「せっかくなら、ホテルも食事も少し贅沢したい。元気に旅行できるうちに、妻といい思い出をつくりたかったんです」

 

由美子さんは費用を心配していましたが、浩さんの希望もあり、滞在は2週間。往復ビジネスクラスで快適に移動し、ホテルも広々とした高級コンドミニアムにしました。費用は夫婦合わせて約300万円。正直、贅沢しすぎと思ったものの、もう二度と行くことはないかもしれないと考え、人生一度の贅沢と割り切りました。

 

現地では美しい海を眺め、買い物や食事を楽しみました。由美子さんも「こんなにゆっくり旅行できたのは久しぶり」と喜び、夫婦にとって忘れられない時間になったといいます。

 

帰国後、浩さんは旅行中に撮影した写真を眺めながら、満足感に浸っていました。

 

「円安で、思った以上にお金がかかりました。でも二人で元気に旅行できたことが何よりでした」

 

貯蓄は減りましたが、すぐに生活に支障が出る状況ではありません。浩さんは、今回の出費を後悔していませんでした。そもそも退職後の資産は、自分たちの生活費や医療・介護への備えを確保したうえで、夫婦で使うものだと考えていたからです。

 

ところが、帰国から2週間ほどたったころ、長男一家が実家を訪れます。長男の大輔さん(39歳・仮名)は、妻と小学生の子ども2人を養う会社員。共働きですが、住宅ローンの返済に加え、子どもの塾代や学校関係の支出もあり、年々負担は大きくなっているといいます。

 

「塾代が上がったうえに、家の修繕も必要になりそうだと話していました。これから高校や大学の費用もかかるので、貯金をどこまで残せるか悩んでいるようでした」

 

息子の話を聞いて、浩さんは旅行に使った300万円のことを考えたそうです。

 

「そのお金があれば、息子たちの負担を少し軽くしてやれたのではないか。孫の教育費に充てることもできたはずですから」