「あなたと家族になれてよかった」36年の夫婦生活に終止符を打った瞬間

「今まで本当にありがとう。それじゃあ、元気でね」

大学卒業から勤めた会社で定年を迎え、約2,200万円の退職金を受け取ったタカシさん(仮名・65歳)。ある日、妻だったキョウコさん(仮名・58歳)と一緒に、役所へ離婚届を提出しました。

タカシさんが29歳、キョウコさんが22歳のときに結婚。36年の夫婦生活に終止符を打ちました。

「あなたと家族になれて本当によかった。これからの人生、お互い思い切り楽しみましょうね」と、キョウコさんも笑顔で別れの言葉を返しました。

実はこの2人の熟年離婚、突然の決断ではありません。タカシさんが定年を迎えたら夫婦関係を解消し、それぞれの人生を歩もうと数年前から話し合っていたのです。

不仲だったわけでも、大きな喧嘩があったわけでもありません。不倫や借金といったトラブルも皆無でした。そ

れでも二人は、人生の後半戦を迎えるにあたり、「これからは別々に暮らしたほうが、お互いにとってよりよい人生になる」という結論に至ったのです。

子育てと介護を終えた50代半ば、夫婦の会話は「老後をどこで過ごすか」へ 

タカシさんは現役時代、会社員として働き続けました。一方のキョウコさんは、パートタイムで働きながら家事と育児を担い、家庭を支えてきました。二人の子どもを無事に独立させ、住宅ローンの返済も終わり、双方の親の介護も乗り越えました。

しかし、子育てや介護がひと段落した50代半ばごろから、夫婦の会話のテーマが変わっていきました。それは「老後をどこで、どう過ごすか」という話題です。

タカシさんは、自然豊かな地方へ移住し、家庭菜園や趣味の釣りをしながら静かに暮らしたいという強い希望がありました。一方のキョウコさんは、長年暮らした今の街を離れるつもりはありませんでした。気心の知れた友人との交流や、長年続けている趣味のサークル活動を大切にしたかったのです。

どちらの希望も長年、家族のために優先順位を下げて我慢してきたものでした。