熟年離婚と聞くと、長年の不満が爆発した結果だと思われがちですが、決してネガティブな理由ばかりではありません。子育てが終わり、定年退職という人生の節目を迎えたことで、お互いのこれからの人生を尊重するために別々の道を歩む夫婦もいます。本記事では、山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が、定年を迎えた65歳の夫と笑顔で別れた58歳妻の事例をもとに、円満な離婚において注意すべき「財産分与」のポイントについて解説します。
「あなたと家族になれてよかった」36年の夫婦生活に終止符を打った58歳妻。退職金2,200万円・65歳夫との〈熟年離婚〉を選んだワケ【弁護士が解説】
夫婦は解消したが「お互いに助け合う」…トラブルなしの財産分与で、新たな人生がスタート
そこから二人は何度も話し合いを重ねました。感情的にぶつかり合うことは一度もなかったといいます。
「夫婦として、同じ家で暮らし続けることだけが正解ではない」
お互いの思いを尊重し合った結果、タカシさんの定年を一区切りとして、それぞれ独立した生活を始めることを決めました。
離婚を決意したあと、二人が最も時間をかけたのは資産の整理でした。タカシさんの退職金約2,200万円に加え、これまでの預貯金などの金融資産が約3,000万円。そして、現在の自宅不動産です。
将来の生活費や年金の見込額を算出し、離婚後も双方が無理なく暮らせるかを冷静にシミュレーションしました。その結果、自宅は売却せずにキョウコさんがそのまま住み続けることになりました。
さらに、退職金と金融資産については、タカシさんが4割、キョウコさんが6割で分割することに決めました。これは、将来キョウコさんが受け取る年金額がタカシさんより少ないことを考慮したうえでの判断でした。定年を機に夫婦関係を見つめ直し、円満に新しい人生のスタートを切ったタカシさんとキョウコさん。
「夫婦という形は解消しました。でも、もし将来どちらかが困るようなことがあれば、お互いに助け合うつもりです」
しかし、このように争いのない熟年離婚であっても、財産分与や年金分割の手続きには法的な知識が必要になるケースがあります。具体的に、どのような点に注意して資産を整理すべきなのでしょうか。
【弁護士が解説】円満な熟年離婚でも要注意…「財産分与」をする際のポイント
離婚というと、夫婦関係が悪化し、争いの末に別れるというイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、本件のように、子育てや仕事が一段落したことをきっかけに、お互いのこれからの人生を尊重して、前向きに別々の道を選ぶ夫婦もいます。当事者同士で話し合いがまとまれば、裁判をせずに「協議離婚」という形で離婚することができます。
もっとも、争いがない離婚であっても、婚姻中に夫婦で築いてきた財産をどのように分けるかという「財産分与」の問題は残ります。預貯金や不動産だけでなく、退職金についても、婚姻期間中の就労に対応する部分は財産分与の対象となることがあります。
財産分与は必ず半分ずつにしなければならないわけではなく、夫婦が納得して合意できれば、本件のように離婚後の収入や年金、住居などを考慮して分け方を決めることもできます。
円満な離婚だからこそ、将来「言った、言わない」という問題を残さないよう、誰がどの財産を取得するのかを整理し、合意した内容を書面に残しておくことが大切です。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
※個人の特定を避けるため、事例の一部を脚色しています。
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