「子どもが困っていれば助けてあげたい」「孫のために支援したい」と考えるのは、親として自然な感情かもしれません。しかし、求められるがままに子世帯への援助を続けていると、思いもよらぬ「老後破綻の危機」や「きょうだい間のトラブル」を招いてしまうこともあります。本記事では合計1,500万円以上の援助を行った70代夫婦の事例をもとに、老後資金を削ってまで子世帯へ資金援助をするリスクについて、CFPの山﨑裕佳子氏が解説します。
「娘より孫が可愛いんでしょ?」40歳長女の一言が“老後破綻”の引き金に…年金月27万円・70代夫婦が〈5年で1,500万円〉失ったワケ【CFPの助言】
「計1,500万円」を娘2人に援助…直面した老後破綻の危機
早速、離れて暮らす夫に事の顛末を報告したヨシミさん。話を聞いた夫は、「確かにリコにだけ援助してやるのは不公平だな」と言って、マンション購入の頭金の一部として500万円を援助することにしました。
しかし、姉妹で合計1,500万円を超える多額の資金援助を機に、ヨシミさんは途端に一抹の不安を覚えました。
結婚以来、夫婦の財布は一貫して夫が握ってきたので、ヨシミさんは自分たちの老後資金がいくらあるのか把握していないのです。当然ともいうべきか、夫の年金額も知らされていません。それでも夫の気前の良さから考えれば「きっと老後資金に不安はないのだろう」と、これまでは楽観視していたのです。
ヨシミさんは思い切って夫に、自分たちの老後資金の目途が立っているのか確認すると、「年金は月額21万円、金融資産は有価証券含めて3,500万円程度」とのことでした。ヨシミさんの年金と合わせても、夫婦の年金収入は月27万円です。
3,500万円が自分たちの老後資金として十分なのか、ヨシミさんには判断できませんでしたが、予想より少ないというのが正直な感想でした。
漠然とした不安に包まれたヨシミさんは、「私たち、老後破綻しないわよね?」と念を押さずにはいられませんでした。
【CFPの助言】優先すべきは「自分たちの老後資金の確保」
「子どもが困っていれば、親として助けてあげたい」と考えるのは決して特別なことではなく、むしろ自然な行動です。ましてや、手元に余裕がある場合「子どもや孫のために支援するのは当然」と考えてしまうのも無理はありません。
しかし、たとえ親側の家計に余裕があったとしても、「親世帯と子世帯の家計は別物」と考えるべきです。
今回のケースでは、次女の開店資金の援助は、親からすれば1回限りの援助のつもりだったでしょう。ところが、その後も見かねてズルズルと援助を続けてしまった結果、いつの間にか子にとって「当たり前」となり、生活費の一部に組み入れられていってしまいました。
こうした援助が長期間続けば、親自身の老後資金に少なからず影響を及ぼすことにもなりかねません。
また、子どもが複数人いる場合、特定の子にだけ援助をすると、兄弟姉妹間の公平感を損なうことにもつながります。親からすれば「困っている子を助けただけ」であっても、援助を受けていない子からすれば「自分には何もしてくれない」という不公平感を覚えるのは自然なことです。
もちろん、子どもへの援助そのものが悪いわけではありません。ただ、優先順位は「数十年間分の自分たちの老後資金」の確保があっての「子どもたちへの公平な援助」が基本です。その上で、子へ援助する場合は、金額や期間、目的を夫婦間で共有することはもちろん、兄弟姉妹にも説明して納得してもらうことが後のトラブルを回避するために重要です。