近年、高齢化社会が抱える孤独を標的とした「SNS型ロマンス詐欺」が横行しています。「自分は絶対に騙されない」と思っていても、恋愛にのめり込むと冷静な判断ができなくなります。本記事では山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が、熟年離婚で孤独を感じていた65歳男性がSNS上で出会った女性に恋心を抱き、大切な老後資金を騙し取られた事例をもとに、ロマンス詐欺の巧妙な手口について解説します。
「俺、騙された…?」熟年離婚で孤独な〈退職金1,800万円〉65歳男性。“一度も会ったことがない”海外在住の女性に「帰国費用」を送金した結果【弁護士が警告】
定年退職と熟年離婚で孤独…〈退職金1,800万円〉65歳男性に届いた一通のメッセージ
都内の中堅メーカーで働き、定年を迎えたマサオさん(仮名・65歳)。退職金約1,800万円を受け取り、これまでの貯金と合わせても、老後資金には余裕がありました。
しかし、マサオさんは日々の生きがいを見失い、虚無感を抱えていました。数年前に価値観のすれ違いから妻と熟年離婚し、子どもたちとも疎遠になっていたためです。会社という居場所も失い、誰とも会話をしない孤独な日々が続いていました。
そんなある日、マサオさんのSNSアカウントに、見知らぬ女性からダイレクトメッセージが届きます。
「素敵な写真を投稿されていますね。海外に住んでいるので、日本が恋しくてメッセージをしてしまいました」
プロフィールには、上品な雰囲気の日本人女性の写真があり、「ヨーロッパで雑貨の輸入会社を経営している」と書かれていました。話し相手がほしかったマサオさんは、つい軽い気持ちで返信をしてしまいます。
「日本に帰ったら一緒に暮らす」甘い言葉と突然のトラブル
それから、女性とのメッセージのやりとりは毎日続くようになりました。
自分を気遣い、必要としてくれる彼女の存在は、マサオさんの孤独な日常を少しずつ明るくしていきました。いつしか二人は、「日本へ帰国した際に、一緒に暮らす」という約束を交わす関係にまで発展します。
すっかり彼女に恋心を抱いていたマサオさんは、第二の人生を共に歩むことを本気で夢見るようになっていました。
そんなある日、彼女から焦ったような様子のメッセージが届きました。
「マサオさん、助けて。日本に帰国しようとしたら現地の税関でトラブルになって、航空券の取り直しや手数料などですぐに100万円が必要になっちゃった。日本に着いたら必ず返すから、立て替えてもらえないかな?」
普段であれば不審に思うような内容ですが、「ようやく会える」と胸を躍らせていた矢先の出来事です。マサオさんは「困っているなら助けなければ」と冷静な判断力を失っていました。