「俺の金がなきゃ生きていけないだろ」…離婚を決意した妻に立ちふさがる壁

帰国後も、ユウキさんの態度は変わりませんでした。機内での一件以来、アヤネさんはユウキさんの言動の端々に強い支配欲を感じるようになり、次第に彼を生理的に受けつけなくなっていきました。

そんなある日、ユウキさんが「そろそろ都内にマンションを買おう」と機嫌よく切り出してきました。すでに精神的な限界を迎えていたアヤネさんは、「ごめんなさい、あなたとはこれ以上の将来を考えられない」と、思い切って離婚の意思を告げました。

しかし、ユウキさんは悪びれる様子もなく、「専業主婦のくせに、俺の金がなきゃ一人で生きていけるわけないだろ」と小馬鹿にするだけ。アヤネさんは離婚を決意したものの、自分自身に収入がないことや、身体的な暴力がない状態で法的に離婚が認められるのかという壁に直面し、一筋縄ではいかない現実に途方に暮れました。

このように、相手に経済的に依存している専業主婦がモラハラ夫との離婚を決意した場合、どのような手順を踏んで準備を進めればよいのでしょうか。

【弁護士が解説】立証が難しいモラハラ…専業主婦が離婚に向けてすべき準備

モラハラは、暴力や不貞行為と異なり、言葉の受け止め方や夫婦関係全体の評価に左右されるため、裁判で離婚原因として立証するのが難しい類型です。もっとも、人格を否定する発言や経済的な支配などが継続し、夫婦関係が修復困難な状態に至っていれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります。

ただし、本件の新婚旅行での一言だけで直ちに裁判上の離婚が認められるとは考えにくいでしょう。離婚を考えるのであれば、その後のLINEやメール、録音などを残し、継続的な言動を客観的に確認できるようにしておくことが重要です。

また、別居期間は婚姻関係の破綻を判断する重要な事情です。実務上3年前後が一つの目安として語られることもありますが、法律上「3年で必ず離婚できる」というルールはありません。

本件のように婚姻後早期から離婚意思が明確で、そのまま別居し、修復の見込みも乏しい場合には、より短い期間でも認められる余地があります。

離婚は人生を大きく左右します。法的に離婚できるかだけでなく、「この人を今後も信頼して長く生活できるのか」という視点から、結婚生活そのものを考えることも大切でしょう。

山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士

※個人の特定を避けるため、事例の一部を脚色しています。

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