「孫のために、できることはしてあげたい」そう思うのは、ごく自然な感情です。ただ、その気持ちが、自分の老後資金を少しずつ削っているとしたらどうでしょうか。善意から始まったはずの支出が、将来の安心を揺らしてしまうこともあります。本記事では、年金月11万円で暮らす70歳女性の事例をもとに、おひとりさま老後の安心を守るための「支出の線引き」について、CFPの石川亜希子氏が解説します。
「孫の顔が見たかっただけなのに…」年金月11万円・70歳おひとりさま女性の後悔。「待望の孫誕生」の喜びと引き換えに〈消えゆく老後資金1,200万円〉【CFPが助言】
毎月5万円の赤字に…おひとりさまを襲う「老後資金の枯渇」の恐怖
総務省の『令和7年家計調査報告』によると、65歳以上の単身無職世帯における家計支出の平均は、消費支出(いわゆる生活費)が約14万8,000円、非消費支出(税金や社会保険料)が約1万3,000円となっています。
月約11万円の年金を受給しているサツキさんの場合、支出が平均的だったとしても毎月約5万円の赤字となるため、気づかぬうちに預貯金を取り崩していくことになります。
現在、日本人女性の平均寿命は87.13歳、サツキさんが元気に長生きすると仮定すると、あと17年あります。つまり、生活費ベースで約1,020万円(5万円×12ヵ月×17年)を預貯金から補填する計算です。ただし、これはあくまで生活費ベースの話です。
さらに、高齢期の医療費自己負担額は平均で年間7万円~9万円となっているため、17年間で100万円以上が追加でかかる計算です。医療費がそこまでかからなくても、介護費用が必要になってくるかもしれず、預貯金1,200万円では心もとない状況に陥る可能性が考えられます。
「そんなに使っているつもりはなかった」…少額の援助も、積み重ねで老後破産の危機に
サツキさんがアイさんの家へ行くには、交通費や支援金などで1回につき約2万5,000円かかります。仮に月に1回のペースで通った場合、これだけで年間約30万円の出費です。生活費の切り崩しが月5万円だとすると、年間で約60万円。
1,200万円ある貯金は、年間で90万円減っていくことになってしまいます。単純計算でも、将来的に資金が不足する可能性が高いといえます。
「そんなに使っているつもりはなかったのに……」と、貴重な老後資金を減らしてしまい後悔しているサツキさん。
たしかに、一つひとつの出費は決して大きな金額ではありません。「少しだけ」「今回だけ」の積み重ねです。
しかし、それが何年も続くことで、家計に与える影響は無視できないものになっていきます。もちろん、支出や寿命は個人差があります。しかし、「このままのペースで続けた場合、どうなるか」を一度冷静に見ておく必要はあるでしょう。