「孫のために、できることはしてあげたい」そう思うのは、ごく自然な感情です。ただ、その気持ちが、自分の老後資金を少しずつ削っているとしたらどうでしょうか。善意から始まったはずの支出が、将来の安心を揺らしてしまうこともあります。本記事では、年金月11万円で暮らす70歳女性の事例をもとに、おひとりさま老後の安心を守るための「支出の線引き」について、CFPの石川亜希子氏が解説します。
「孫の顔が見たかっただけなのに…」年金月11万円・70歳おひとりさま女性の後悔。「待望の孫誕生」の喜びと引き換えに〈消えゆく老後資金1,200万円〉【CFPが助言】
【CFPが助言】我慢ではなく「あらかじめ決める」…老後の安心を守るための“正しい線引き”
それでは、サツキさんは孫への支出をきっぱりとやめるべきなのでしょうか。
「娘も大変そうだから」「やっと生まれた孫だから」「ひとりで家にいるより、あの子たちのところに行くほうが楽しい」とサツキさんが語るように、そこにはお金では測れない価値があるのも事実です。
だからこそ、この問題は「支出を減らせばよい」という単純な話ではないのです。ポイントは「我慢すること」ではなく、「あらかじめ決めておくこと」です。
たとえば、以下のようなルールが有効です。
・交通費は自分で負担するが、生活費は子世帯の負担とするなど、役割を分ける
・年間15万円まで、など上限を決める
・お金以外の支援(家事や育児のサポート)を増やす
こうした基準があれば、「今回は難しい」と伝えやすくなります。感情ではなく、ルールで判断するだけで、「できる範囲で支える」形に変えていくことができます。
また、「これからの生活を考えて、少しずつ見直したい」と子世帯に伝えましょう。ひとりで抱え込まないことも大切です。
孫のために使うお金は無駄ではない…「できる範囲」でサポートする決断
サツキさんは、少しずつ支出の見直しを始めました。パートも再開したいと考えています。アイさんの家へ訪問する回数を減らし、渡すお金にも上限を設けました。
「全部は無理だけど、できる範囲で応援したいの」とアイさんに伝えたことで、サツキさんの気持ちも少し軽くなりました。
孫のために使うお金は、決して無駄ではありません。むしろ、その時間や経験は、人生を豊かにする大切な支出です。
ただし、「気づかないまま続いてしまう支出」には注意が必要です。老後資金は、余ったお金ではなく、これからの生活そのものです。そのなかで、どこまで誰のために使うのか。
その線引きを自分で持てるかどうかが、おひとりさま老後の安心を大きく左右します。いま一度、自分なりのバランスを見つめ直してみることが大切です。
石川 亜希子
CFP
※個人情報保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。
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