親が再婚している場合、相続において「前妻(前夫)の子」と「後妻(後夫)」の間でトラブルが起きるケースは少なくありません。とくに問題になりやすいのが、受取人が指定されている「死亡保険金」の扱いです。本記事では、父親の全財産の大部分を占める死亡保険金を後妻に独占され、不公平な遺産分割を迫られた40代男性の事例をもとに、弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が相続における死亡保険金の扱いについて解説します。
「不公平すぎませんか…」父の死後、〈死亡保険金4,000万円〉を独占した62歳後妻。前妻の45歳息子が絶望した“理不尽な遺産分割”【弁護士が解説】
「不公平すぎませんか…」実の息子が直面した理不尽な遺産分割
たしかに、原則として死亡保険金は受取人の固有の財産とされ、遺産分割の対象には含まれません。しかし、タカシさんにとってこの状況はどうしても納得できるものではありませんでした。
父親は生前、「俺にもしものことがあっても、お前にはちゃんと財産が残るようにしてあるから安心しろ」と口にしていました。全財産の大部分を後妻に渡し、実の息子を冷遇するような意図があったとは到底思えなかったのです。
しかし手元にある証書には、はっきりとヨウコさんの名前が記されています。このままヨウコさんの言う通り、わずかな預貯金だけを受け取って泣き寝入りするしかないのでしょうか。
実質的な遺産の大部分を後妻が独占するというあまりに理不尽な現実に、タカシさんは憤りを感じています。
このように、遺産の大部分を占める死亡保険金が特定の相続人に渡り、他の相続人と著しい不公平が生じる場合、法律上はどのような扱いになるのでしょうか。
【弁護士が解説】例外的に「特別受益」となるケースも…死亡保険金の扱い
死亡保険金は、原則として受取人固有の財産であり、相続財産には含まれません。また、通常はそのまま自動で「特別受益」として持ち戻されるものでもありません。もっとも、これはあくまで原則論です。
裁判例では、保険金額と遺産総額との比率、婚姻期間、被相続人との同居・扶養関係、各相続人の生活実態などを総合し、他の相続人との不公平が到底看過できないほど大きい場合には、例外的に死亡保険金を特別受益に準じて扱うことがあります。
本件では、相続財産が1,000万円であるのに対し、後妻が受け取る死亡保険金は4,000万円と、その4倍に達しています。もちろん金額の割合だけで結論が決まるわけではありませんが、裁判例の傾向からすれば、これほど保険金の割合が大きいケースでは、例外的な持ち戻しが認められる可能性は相応に高いと考えられます。
再婚家庭では、保険金の受取人指定が思わぬ相続紛争を招くことがあります。遺言書だけでなく、生命保険を含めた財産全体の承継バランスを生前に確認しておくことが重要だといえるでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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