親が亡くなり遺産分割を行う際、一部の相続人から騙されて実態と異なる内容で遺産分割協議書に印鑑を押してしまった場合でも、あとから「錯誤(勘違い)」や「詐欺」を理由に無効を主張できるケースがあります。本記事では、弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が、「父の遺産は古い実家だけ」と嘘をついて遺産6,000万円を隠した兄が、弟に真相を見破られる事例から、遺産隠しの実態と無効になる条件を解説します。
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「父の遺産は実家だけ」と嘘をつき、代償金200万円で弟に印鑑を押させた50歳兄。〈6,000万円の財産隠し〉がバレて開き直る「泥沼相続」【弁護士が解説】
「葬儀代や入院費で消えちまった」…資産家の父を亡くした50歳兄の発言
関東地方に住むタロウさん(仮名・50歳)と弟のジロウさん(仮名・47歳)は、実家で一人暮らしをしていた資産家の父(享年80歳)を亡くしました。
葬儀が落ち着いたころ、実家の近くに住んで父の面倒を見ていた兄のタロウさんが、遺産分割の話し合いを切り出しました。
「ジロウ、親父の遺産なんだけどな、調べてみたらこの古い実家しかないみたいだ。預金は葬儀代や入院費で消えちまったよ」
ジロウさんは「父さんは昔から羽振りがよかったはずなのに」と少し疑問に思いましたが、兄が言うならと深く追及しませんでした。
代償金200万円で実印を要求され…「遺産分割協議書」に承諾した47歳弟
「実家は俺が引き継いで管理するから、お前には代償金として現金200万円を渡す。これでハンコを押してくれ」
もっとも、タロウさんが用意した遺産分割協議書には、実家の土地建物だけでなく、父名義の預貯金口座や証券口座についても記載され、それらをタロウさんが取得する内容となっていました。
ジロウさんが「預金はほとんど残っていないんじゃないの?」と尋ねると、タロウさんは「口座の解約手続きのために書いてあるだけだ。残っている金額は大したことないよ」と説明しました。
専門的な表現が並ぶ遺産分割協議書を細かく確認することなく、「実の兄が嘘をつくはずはない」と考えたジロウさんは、その説明を信じて実印を押し、印鑑証明書を渡してしまいました。