親が再婚している場合、相続において「前妻(前夫)の子」と「後妻(後夫)」の間でトラブルが起きるケースは少なくありません。とくに問題になりやすいのが、受取人が指定されている「死亡保険金」の扱いです。本記事では、父親の全財産の大部分を占める死亡保険金を後妻に独占され、不公平な遺産分割を迫られた40代男性の事例をもとに、弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が相続における死亡保険金の扱いについて解説します。
「不公平すぎませんか…」父の死後、〈死亡保険金4,000万円〉を独占した62歳後妻。前妻の45歳息子が絶望した“理不尽な遺産分割”【弁護士が解説】
父の急死…「遺産は1,000万円だけよ」突然冷たくなった62歳後妻の態度
都内の会社で働くタカシさん(仮名・45歳)は、半年前に父親を75歳で亡くしました。父親はタカシさんが中学生のころに前妻である母親と離婚しており、タカシさんが社会人になった直後に、現在の後妻であるヨウコさん(仮名・62歳)と再婚していました。
タカシさんと父親の関係は決して悪くなく、年に数回は顔を合わせて食事をする間柄でした。ヨウコさんとも表面上は穏やかに接してきました。
しかし、父親が亡くなり四十九日の法要を終えたころから、ヨウコさんの態度は急変します。遺産分割の話し合いの席で、ヨウコさんはタカシさんに告げました。
「お父さんの遺産だけど、預貯金の1,000万円だけなのよ」
実家はすでに賃貸マンションに住み替えており、不動産はありません。タカシさんは父親がかつて自営業を営んでおり、それなりの蓄えがあるはずだと考えていたため、遺産が1,000万円しかないという言葉に違和感を覚えました。
「保険金は遺産じゃない」4,000万円の死亡保険金を独占する後妻の主張
タカシさんがヨウコさんに問いただすと、父親は預貯金とは別に、4,000万円もの生命保険をかけていたことが判明しました。しかし、その死亡保険金の受取人はすべて後妻であるヨウコさんに指定されていたのです。
「保険金は受取人である私の財産になるの。だから遺産分割の対象にはならないわ。預貯金の1,000万円を、半分ずつ分けましょう」
ヨウコさんの主張は、保険金の4,000万円はすべて自分が受け取り、残りの預貯金1,000万円だけをタカシさんと500万円ずつ分けるというものでした。
タカシさんは言葉を失いました。父親が残した財産は実質的に5,000万円です。しかし、ヨウコさんの言う通りにすれば、ヨウコさんが4,500万円を手にする一方で、実の子であるタカシさんはわずか500万円しか受け取れません。
「いくらなんでも、それは不公平すぎませんか……」
タカシさんが反論しても、ヨウコさんは「法律でそう決まっているんだから仕方ないでしょ」と聞く耳を持ちませんでした。