年金の支給開始年齢となる65歳を超えても、仕事を続ける人が増えています。「年金の繰り下げ受給で支給額を増やしたい」「年金だけだと生活が不安」といった経済的な理由だけでなく、働くこと自体が心身を健康に保つための活力になっている場合もあるのです。息子から「早く仕事を辞めて孫の世話に専念してほしい」と言われた町田かおるさん(仮名・70歳)のケースを見てみましょう。
「母さんはいつになったら仕事辞めるの?」パートをしながら週5で孫の面倒を見る70歳女性、息子からの〈孫に専念して〉にモヤモヤ
働く理由はお金だけではない
かおるさんにとって、働く理由はお金のためだけではありませんでした。仕事を通して家族以外の人と関わりを持つことができ、「今日もありがとう」「おつかれさま」と声をかけてもらうことが活力になっていたのです。
内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)」によると、70歳~74歳の女性が働く理由として最も多いのが「収入のため(40.0%)」、次点が「働くのは体によいから、老化を防ぐから(28.2%)」でした。年代が高くなるほど「収入のため」と回答した割合が低く、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」と回答した割合が高くなっています。
また、内閣府「令和6年版高齢社会白書(全体版)」では、令和6年の労働力人口6,957万人のうち、70歳以上の労働力人口は546万人です。年金の支給開始年齢となる65歳以上の労働者の割合は13.6%であり、長期的に上昇傾向にあることがわかります。
出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書(全体版) 労働人口の推移」
後日、長男が勤務先の会社に相談し、水曜日だけ在宅勤務をさせてもらえることになりました。水曜日だけは海斗くんも真っすぐ自分の家に帰れるので、かおるさんがパート終わりに急いで帰宅する必要もありません。
「息子に申し訳ない気持ちはありますが、水曜日だけは時間を気にせず仕事ができますし、退勤後にゆっくり買い物もできます。気持ちに余裕ができた分、孫にもカリカリしなくなりました」
かおるさんは穏やかな表情で話します。
親が近くに住んでいる場合、子どもの面倒を見てもらえるのはありがたいメリットだと思います。しかし、当たり前のように頼りすぎてしまうと親の生活が犠牲になってしまうこともあるでしょう。「この日だけは早めに帰宅して子どもの夜ご飯を作る」「この曜日は在宅勤務にする」など、どうすれば一方に負担が偏らずに済むかを考えることが重要なのかもしれません。

