「結局、お母さんは私のこと認めてくれてないんだね」。地元の有名中高一貫校から志望する国立大学へ進み、東京で働く45歳の一人娘。75歳のミチコさんにとっては、自慢の存在でした。国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」では、18~34歳の未婚女性で「いずれ結婚するつもり」と答えた割合は84.3%と、前回調査から低下しています。結婚や出産を当然としない価値観も広がるなか、ミチコさんの「あんたも子どもさえいれば」という一言をきっかけに、娘が長年抱えてきた思いが噴き出しました。
あとは孫さえいれば…〈年金月14万円・一人暮らし〉75歳母が「自慢の一人娘」に漏らした一言。娘が子どもを持たなかった「本当の理由」 ※写真はイメージです/PIXTA

親戚にも評判だった自慢の一人娘

地方都市で一人暮らしをするミチコさん(75歳・仮名)には、45歳になる一人娘のナオさん(仮名)がいます。

 

ナオさんは地元では有名な中高一貫校を卒業後、自ら志望した国立大学へ進学。そのまま東京で就職し、現在は年収800万円ほどの会社員として忙しく働いています。結婚歴はなく、子どももいません。

 

ミチコさんは夫に先立たれ、現在は年金月約14万円、貯蓄1,500万円ほどで暮らしています。

 

離れて暮らしていても、ナオさんは母親をよく気にかけていました。

 

飼い猫のフードが切れそうだと聞けばネット通販で送る。帰省すれば重いものの買い出しを手伝う。スマートフォンの使い方がわからないと相談されれば、電話で教える。

 

「娘には本当によくしてもらっています」

 

ミチコさんも、周囲にはそう話していました。

 

なかでも娘を頼もしいと感じたのが、100歳を超えていたミチコさんの母親、つまりナオさんの祖母が亡くなったときです。

 

喪主はミチコさんでしたが、葬儀社との打ち合わせや親族への連絡、受付の段取りなど、実務の多くをナオさんが担いました。しかも前に出すぎず、「喪主はお母さんだから」と母親を立てて動きます。

 

親戚からも、「ナオちゃん、本当にしっかりしてるね」「いい娘さんを持ったね」と大評判。

 

ミチコさん自身、内心とても誇らしかったといいます。

 

孫自慢を聞いてこぼした余計な一言

ある日、ミチコさんは同年代の友人とお茶をしていました。

 

話題は子どもや孫のことです。

 

「孫が大学に入るの」「お盆に孫が泊まりに来てね。もう疲れちゃってヘトヘト」

 

そう話す友人を見ながら、ミチコさんは少し羨ましい気持ちになりました。その数日後、帰省していたナオさんに、つい口にしてしまいます。

 

「あんたも子どもさえいればねえ」

 

ナオさんの表情が変わりました。

 

ミチコさんは慌てて、「今が悪いって言ってるんじゃないのよ。ただ、女としての幸せもつかんでほしかったっていうか……」と続けます。

 

するとナオさんは、「結局、お母さんは私のこと認めてくれてないんだね」と怒り出しました。

 

何をしても「まだ足りない」

ミチコさんは驚きました。

 

娘のことは、ずっと自慢だったからです。

 

「認めてないなんてことないでしょう。私はずっと、あんたは優秀だって言ってきたじゃない」

 

しかし、その言葉にナオさんはさらに怒りました。

 

「大学に受かったときだって、『あんただったら東大にも行けたのに』って言ったよね」

 

ナオさんが進学した国立大学は、本人が希望して選んだ大学でした。学びたいこともあり、本人にとっては満足のいく進学先でした。

 

しかしミチコさんは、「国立と言っても二期校だし。あの子なら、もっと頑張れば東大にだって行けたと思うのよ」と親戚や知人に話すことがありました。

 

ミチコさんにとっては、娘の能力を高く評価しているつもりの言葉です。

 

けれどナオさんには、そうは聞こえていませんでした。

 

「学校も頑張った。仕事も頑張ってきた。おばあちゃんのお葬式だって、お母さんが困らないようにやった。離れていても、お母さんのことも猫のことも気にしてきた」

 

そして、「頑張っても頑張っても、いつも『もっと上がある』『あとは結婚』『あとは子ども』って言われる。私はいつになったら、そのままで認めてもらえるの?」と訴えました。