数ヵ月に一度、居酒屋で仕事の愚痴や先々の不安を語り合う間柄だった友人から、「実は、先月会社を辞めたんだ」というまさかの告白。「なぜ言ってくれなかったんだ」「俺はこのままでいいのか?」――そんな思いに苛まされることになった55歳会社員の事例とともに、サラリーマンという立場を離れることの自由と代償を、FPの青山創星氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
老後が不安だと、あんなに語り合ってきたのに…30年来の友人が、まさかの〈4,500万円でFIRE〉。「おめでとう」と言えなかった55歳会社員“複雑な心境”の理由【FPの解説】
FPが語る、「レールを降りる」ことの光と影
池上さんが相談したのが、ファイナンシャルプランナーの永瀬財也さん(仮名)です。白石さんのFIREの話を伝えたうえで、「自分も何かしたほうがいいんじゃないか、このままでいいんだろうか」――そんな不安をぶつけました。
永瀬さんは話し始めました。
「白石さんのような、会社員というレールを早めに降りる生き方には、良い面と難しい面があるんです」
良い面は、自分の意思で働き方を選べること、健康上の理由でも生き方を変えられること、職場の人間関係から離れられること。「ただ、良いことばかりでもないんです」と永瀬さんは続けました。
「まず、働き続ければ増えたはずの厚生年金の上乗せが止まります。それに、白石さんは年間300万円を生活費に充てると話していたそうですが、4,500万円の資産に対して、初年度から約6.7%を取り崩す計算になります。これは、FIREでよく知られている『4%ルール』よりも高い水準です」
「4%ルール? 毎年、資産の4%を取り崩していくという意味でしょうか」
「一般にそう理解されがちですが、本来は、最初の年に資産の4%を取り崩し、2年目以降は、前年の取り崩し額を物価上昇率に応じて調整していくという考え方なんです。生活費は物価が上がれば増えていきますから、相場が悪いときには資産への負担が大きくなることもあります。4%ルールを使えば必ず大丈夫というわけでもありません。相場や物価、寿命などによって結果は変わるんです」
「白石の言っていた老後資産計画は楽観的に見えますね」
「そうですね。ただ、だからといって『会社員として働き続ければ安心』とも言い切れません。勤労収入だけで老後資金を十分に増やしていくのも、決して簡単ではありませんから」