「数字では大丈夫」でも妻の答えは「絶対ダメです」

羽田さんがFIREを意識し始めたのは、子どもたちが独立したころでした。

「ここまで働いてきたんだから、残りの人生は自分の好きなように使いたい」

そう考え、FPにも相談しました。現在の金融資産、今後の生活費、農業収入、公的年金、個人年金などを整理し、今後のキャッシュフローをシミュレーションしてみました。60歳まで金融資産を計画的に取り崩し、その後は公的年金や個人年金などを組み合わせるプランを検討しました。

公的年金を60歳から繰上げ受給する案についても、減額が生涯続くことを踏まえて試算。そのうえで支出の少ない羽田さん夫婦であれば、早期退職そのものは十分検討可能という結果になりました。

「プロのお墨付きだ、これで辞められるぞ」

そう思った羽田さんでしたが、妻の香さんは納得しません。

「年金を早くもらったら減っちゃうんでしょう? お金があっても使えば減っちゃうし、残高が減っていくと不安」
 「毎日家にいるのも困るし、まだ57歳なのに仕事を辞めたら近所の人から何て思われるの?」

羽田さんはFPに作ってもらった資料を見せながら何度も説明しましたが、それでも妻の答えは「NO」。認めてはもらえません。

会社に行けば、責任の重い仕事が待っています。しかし、生活するためだけなら、すでに十分と思える資産がある。

「俺はいったい、何のためにいつまで働くんだろう……」

経済的には会社から離れられるはずなのに、羽田さんのFIRE生活はいまだ始まっていません。