老後資金は10年で2,000万円減少…夫婦にのしかかる「家計の重圧」

夫婦をもっとも悩ませたのが、「お金」の問題でした。現在、二人の収入は合わせて月約30万円の年金のみ。このなかから、無収入のケントさんを含む3人分の食費や日用品費などを賄わなくてはいけません。

ケントさんは一日中自宅で過ごしているため、電気代などの光熱費も以前より大幅に増えたほか、たびたびネットで購入する趣味のフィギュアや鉄道模型などの費用についても、「ムダ遣いさせないために」と夫婦が負担していました。

ケントさんが実家に戻った当時、夫婦には退職金やそれまでの貯金を合わせて約5,000万円の資産がありましたが、足りない生活費を貯金から補う生活が続き、10年経ったいまでは約3,000万円まで減少しています。

「私たちはもうすぐ80歳になる。この先もずっと、息子を養っていかなければならないのか……」

そしてなにより不安だったのが、自分たちが亡くなったあとのことです。

「私たちがいなくなったら、ケントはどうやって生活していくのだろう」

3年後、夫婦は80歳となり、ケントさんも50歳を迎えます。このままでは限界を迎える日も近いと、夫婦は頭を抱えていました。

【CFPが解説】困窮と孤立で親子共倒れに…「8050問題」の打開策

ひきこもりが長期化すると、子どもだけでなく、生活を支える親も高齢になっていきます。こうしたなかで深刻化しているのが、「8050問題」です。

「8050問題」とは、80代の親が、ひきこもりなどによって社会とのつながりが乏しい50代の子どもの生活を支え続け、親子ともに経済的・社会的に孤立してしまう状況を指します。

内閣府が公表した資料によると、40~64歳のひきこもり状態にある人は、全国で約61万人と推計されています。

出典:内閣府「生活状況に関する調査」推計を参考に筆者作成
[図表]年齢別・ひきこもり状態にある人の推計 出典:内閣府「生活状況に関する調査」推計を参考に筆者作成

8050問題で特に注意したいのが、次の2点です。

・経済的困窮(親の年金への依存)

・社会的孤立

子どもに収入がなければ、食費や住居費などを親が負担することになります。親が高齢になると収入は年金中心となるため生活費が足りず、老後資金を取り崩し続けるケースも少なくありません。

また、家族が周囲との関係を断った場合、親の介護や死亡をきっかけに生活が立ち行かなくなっても周囲がそれに気づかない可能性があります。

こうした問題を避けるためにも、深刻になる前に家族以外に相談できる場所を持つことが重要です。ひきこもり地域支援センターなどの相談窓口のほか、経済的な問題を抱えている場合には生活困窮者自立支援制度なども活用できます。

支援内容は本人の状況や家庭が抱える問題によって異なるため、どのような支援を受けられるのか、まずは地域の相談窓口で確認してみるとよいでしょう。