ひきこもりは本人だけでなく、生活を支える家族にも大きな影響を及ぼします。特に、ひきこもりが長期化し、高齢になった親が中高年の子どもを支え続ける「8050問題」は社会問題となっており、親子の孤立に加え、老後資金への影響も見過ごせません。本記事では、70代の元公務員夫婦とその息子の事例をもとに、辻本剛士CFPが8050問題の打開策について解説します。
「息子は霞が関で頑張ってますよ」年金月30万円・元国家公務員の77歳夫婦、順風満帆な日々の裏側。地元で評判のエリート一家の〈誰にも言えない秘密〉【CFPが解説】
「霞が関で頑張っている」地元で評判のエリート一家の“裏側”
ミツヒコさん(仮名・77歳)と妻のサトミさん(仮名・77歳)夫婦はともに元国家公務員で、地元では「エリート夫婦」として知られる存在でした。
二人には一人息子のケントさん(仮名・47歳)がおり、難関大学を卒業後、国家公務員総合職として中央省庁に入省。いわゆる「官僚」として霞が関で働き始めます。
「ミツヒコさんの息子さん、官僚なんでしょう?」
「ええ、おかげさまで。霞が関で頑張っているみたいです」
そんな会話をすることが、夫婦にとって誇らしくもありました。近所の人たちはいまも、ケントさんは東京で順調にキャリアを重ねていると思っています。
官僚の息子は自宅の2階でひきこもり…元国家公務員夫婦の「誰にも言えない秘密」
しかし実際のところ、ケントさんは10年ほど前から実家に戻り、現在は自宅の2階にひきこもっています。
ケントさんは30代のころ、本省の多忙な部署へ異動。仕事が終わらず、帰宅が深夜になる日も増えていきました。もともと責任感が強く「仕事ができる」と評価されていたケントさんは「できません」とは言えず、ストレスを抱え込むようになります。
やがて心身に不調をきたし、うつ病と診断されました。休職して復帰を目指したものの思うように回復せず、そのまま退職。東京を離れ、両親が暮らす実家へ戻ることになったのです。
実家に戻ったケントさんは、食事やトイレ以外ではほとんど部屋から出ず、外出するのも人目につかない時間帯だけ。夫婦も当初は「しばらく休めば、また働けるだろう」と考えていましたが、いくら経っても状況は変わりません。
それでも夫婦は、誰にも相談できずにいました。
「官僚だった息子が仕事を辞めて、ひきこもっているなんて、とても人には言えない……」
これまで「エリート一家」と見られてきただけに、世間体やプライドが邪魔をします。近所の人には「東京で元気に働いています」と嘘を重ねていました。